1級建築施工管理技士 第一次検定対策(施工管理法の応用問題)ー前編

令和5年度の第一次検定対策、一昨年度(令和3年度)より出題されるようになった『施工管理法の応用問題』について今回は取り上げたいと思います。

この問題は昨年及び一昨年は、主に躯体工事及び仕上げ工事の分野及び昨年は材料の保管の問題と計6問が出題されています。

どういった問題が出題されているか、どういう対策を取るべきかについて今回はまとめています。

施工管理法の応用能力問題の合格基準

昨年より出題分野となった『施工管理法の応用能力問題』は午後の部No.55~No.606問出題されて、6問とも解答する必要があります。

60問のうちの6問ですから比重的には大したことはありませんが、この施工管理法の応用能力問題』で合格基準に達しないと、試験全体が不合格になる所が、受検者の課題の一つとなっています。実際のところ、他の一般問題は基準点をクリアしたものの、この応用能力問題で基準に達せずに不合格になった方も良く聞きます。

 

この『施工管理法の応用能力問題』で60%以上の正答率を確保しないと、他の問題で90%以上取れても不合格であることを頭に入れて試験対策を取ることが大切です。

この60%以上とは、

6問×60%=3.6問(4問)

4問以上の正答が必要です。ちなみに一昨年(令和3年)は合格発表時に

が合格基準となった旨発表がありました。

昨年の令和4年は6問中4問の正答が合格基準になったので、こちらが基本的な合格水準ですね。
※令和3年は合格率も低かったので合格基準を見直したと思われます。

 

施工管理法の応用能力問題とは?

このサイトをよくお読みの方ならご存じの通り、

この『施工管理法の応用能力問題』は従来の学科試験の四肢一択ではなく五肢二択の出題方式です。

昨年を例にとると、5問の選択肢より2つ不適当なものを選ぶというものです。

そして選んだ2つのうち、1つでも間違っていると得点になりません。(不正解) ⇒問題が難しくなっている一要因ですね。

 

まずはここ2年の出題内容を見ていきましょう。

まずは令和3年

問題 種別 工種 問題内容
55 躯体工事 鉄筋工事 異形鉄筋の継手及び定着
56 型枠工事 型枠支保工
57 耐震改修工事 鉄筋コンクリート造耐震改修の柱補強工事
58 仕上げ工事 防水工事 屋根保護アスファルト防水工事
59 建具工事 鋼製建具工事
60 内装改修工事 既存床仕上げ材の撤去及び下地処理

次に令和4年です。

問題 種別 工種 問題内容
55 施工管理法 材料の保管 工事現場における各種建築材料の保管方法
56 躯体工事 型枠工事 型枠工事の組立、許容応力度、鉛直荷重など
57 コンクリート工事 コンクリートの養生
58 仕上げ工事 金属工事 軽量鉄骨壁下地
59 塗装工事 コンクリート素地面の各種塗装
60 外壁改修工事 小口タイル張り外壁面の調査方法と改修方法

以上2年分ですね。

この2年の出題傾向を読み解く限り、施工管理法と施工の躯体工事及び仕上げ工事の履修の反復が必要のようです。

 

では具体的に、今回は躯体工事関連の問題を見ていきましょう。

令和3年の出題(躯体工事)

鉄筋工事の問題

No.55  異形鉄筋の継手及び定着に関する記述として、不適当なものを2つ選べ。
ただし、dは、異形鉄筋の呼び名の数値とする。
  1. 壁縦筋の配筋間隔が上下階で異なるため、重ね継手は鉄筋を折り曲げずにあき重ね継手とした。
  2. 180°フック付き重ね継手としたため、重ね継手の長さはフックの折曲げ開始点間の距離とした。
  3. 梁主筋を柱にフック付き定着としたため、定着長さは鉄筋末端のフックの全長を含めた長さとした。
  4. 梁の主筋を重ね継手としたため、隣り合う鉄筋の継手中心位置は、重ね継手長さの1.0倍ずらした。
  5. 一般階における四辺固定スラブの下端筋を直線定着としてたため、直線の定着長さは、10d以上、かつ、150mm以上とした。
解答・解説
(解答)3,4
(解説)上記の5つの選択肢はすべて、過去問の躯体工事の問題で出題されています。(誤りの部分も同じ)
過去問をしっかり行っていれば、正解の取れる問題ですね。
(令和元年)壁配筋の配筋間隔が下階と異なる場合、重ね継手は鉄筋を折り曲げずにあき重ね継手とすることができる。
(令和元年)180°フック付き重ね継手とする場合、重ね継手の長さはフックの折曲げ開始点間の距離とする。
(令和元年)梁主筋をフック付き定着とする場合、定着長さは鉄筋末端のフックを含めた長さとする。
⇒正解は、『定着長さはフック付きとする場合、フック部分の長さは含まない
(平成28年)梁の主筋を重ね継手とする場合、隣り合う継手中心位置は、重ね継手長さの1.0倍ずらず。
⇒梁の主筋を重ね継手とする場合、隣り合う鉄筋の継手中心位置は重ね継手長さの0.5倍~1.5倍以上ずらす
(平成28年)一般階における四辺固定スラブの下端筋の直線定着長さは、10d以上、かつ、150㎜以上とする。

型枠工事の問題

No.56  型枠支保工に関する記述として、不適当なものを2つ選べ。
  1. パイプサポート以外の鋼管を支柱として用いる場合,高さ2.5 m 以内ごとに水平つなぎを2 方向に設けなければならない。
  2. 支柱として用いる鋼管枠は,最上層及び 5 層以内ごとに水平つなぎを設けなければならない。
  3. パイプサポートを 2 本継いで支柱として用いる場合,継手部は4 本以上のボルト又は専用の金具を用いて固定しなければならない。
  4. 支柱として用いる組立て鋼柱の高さが5 mを超える場合,高さ5 m 以内ごとに水平つなぎを 2 方向に設けなければならない。
  5. 支柱として用いる鋼材の許容曲げ応力の値 は,その鋼材の降伏強さの値又は引張強さの値の3/4の値のうち,いずれか小さい値の2/3の値以下としなければならない
解答・解説
(解答)1,4
(解説)この問題も、過去に出題された選択肢ばかりです。但し①は平成25年と古いですが、他との消去法で正解と取りたいですね。
(平成25年)パイプサポート以外の鋼管を支柱として用いるので、高さ 2 m以内ごとに水平つなぎを2方向に設けた。
⇒よって①は不適当
(令和元年)支柱に鋼管枠を使用する場合、水平つなぎを設ける位置は、最上層及び5層以内ごととする。
(平成29年)支柱にパイプサポートを2本次いで使用するので、継手部を4本以上のボルトで固定した。
(平成27年)支柱として用いる組立て鋼柱の高さが5 mを超える場合,高さ5 m 以内ごとに水平つなぎを 2 方向に設けなければならない。
⇒正解は、『鋼柱の高さが4mを超える時は、高さ4m以内ごとに2方向に水平つなぎを設けなければならない』
(令和元年)
支柱に用いる鋼材の許容曲げ応力の値 は,その鋼材の降伏強さの値又は引張強さの値の3/4の値のうち,いずれか小さい値とする。
⇒正解は、『その鋼材の降伏強さの値又は引張強さの値の3/4の値のうち,いずれか小さい値の2/3の値以下としなければならない』なので⑤は正しい。

耐震改修工事

No.57  鉄筋コンクリート造の耐震改修における柱補強工事に関する記述として、不適当なものを2つ選べ。
  1. RC巻き立て補強の溶接閉鎖フープ巻き工法において,フープ筋の継手はフレア溶接とした。
  2. RC巻き立て補強の溶接金網巻き工法において、溶接金網相互の接合は重ね継手とした。
  3. 連続繊維補強工法において,躯体表面を平滑にするための下地処理を行い,隅角部は直角のままとした。
  4. 鋼板巻き工法において,工場で加工した鋼板を現場で突合せ溶接により一体化した。
  5. 鋼板巻き工法において、鋼板と既存柱の隙間に硬練りモルタルを手作業で充填した。
解答・解説
(解答)3,   5
(解説)5問中4問は過去問にありますが、そのうちの3問は平成24年以前です。これを正解にするのは難しいですね。
(平成26年)溶接閉鎖フープ巻き工法において、フープ筋の継手は、溶接長さが片側10d以上のフレア溶接とした
(平成24年)柱の溶接金網巻き工法において、溶接金網は分割して建て込み、金網相互の接合は重ね継手とした
(平成24年)柱の連続繊維補強工法において、躯体表面を平滑にするための下地処理を行い、隅角部は直角のままとした。
⇒正解は、『隅角部はRに面取りする。』直角のままはNGです。
(平成23年)鋼板巻き工法において、コ形に加工した2つの鋼板を □形に一体化する際、接合部の溶接は部分溶込み溶接とした。
⇒突合せ溶接には部分溶込み溶接と完全溶込み溶接があるので、近似問題と言って良いでしょう。
(なし)鋼板巻き工法は、隙間には無収縮モルタルを充填します。

 

令和4年の出題(施工管理法・躯体工事)

材料の保管

NO.55 工事現場における材料の保管に関する記述として、不適当なものを2選べ。
  1. 車輪付き裸台で運搬してきた板ガラスは, 屋内の床に, ゴム板を敷いて平置きで保管した。
  2. ロール状 に巻いたカーペットは, 屋内の乾燥した平坦な場所に, 2段の俵積みで保管した。
  3. 高力ボルトは, 工事現場受入れ時に包装を開封し, 乾燥した場所に, 使用する順序に従って整理して保管した。
  4. 防水用の袋入りアスファルトは、積重ねを10段以下にし、荷崩れに注意して保管した。
  5. プレキャストコンクリートの床部材は平置きとし, 上下の台木が鉛直線上に同位置になるように積み重ねて保管した。
解答・解説
(解答)1,3
(解説)
(平成29年)板ガラスは、車輪付き裸台で搬入し、できるだけ乾燥した場所に裸台に乗せたまま保管した。
→こちらが誤りで、ガラスは基本、縦置きなので①の平置きは誤りです。
(平成30年)ロール状 に巻いたカーペットは, 屋内の乾燥した平坦な場所に, 2段の俵積みとする。
(平成28年)高力ボルトは搬入された梱包のまま、箱の積上げ高さを3~5段にして保管する。
→こちらが誤りですね。使用時まで開封せずに保管します。
(平成元年)防水用の袋入りアスファルトは、積重ねを10段以下にし、荷崩れに注意して保管する。
(平成29年プレキャストコンクリートの床部材は平置きとし, 上下の台木が鉛直線上に同位置になるように積み重ねて保管した。全て最近の過去問に網羅されている問題なので、こちらは確実に取りたいですね。

型枠工事

NO.56  型枠工事に関する記述 として, 不適当なものを2選べ。
  1. 支保工以外の材料の許容応力度は, 長期許容応力度と短期許容応力度の平均値とした。
  2. コンクリート打込み時に型枠に作用する鉛直荷重 は, コンクリートと型枠による固定荷重 とした。
  3. 支柱を立てる場所が沈下するおそれがなかったため, 脚部の固定と根がらみの取付けは行わなかった。
  4. 型枠の組立ては, 下部のコンクリートが有害な影響を受けない材齢に達してから開始した。
  5. 柱型枠の組立て時に足元を桟木で固定し, 型枠の精度を保持した。
解答・解説
(解答)2,3
(解説)この問題も過去問から読み解いていきましょう。
(令和2年他)支保工以外の材料の許容応力度は, 長期許容応力度と短期許容応力度の平均値とする。
② 鉛直荷重は、固定荷重に加えて積載荷重の和が正しいのでこの②は誤りですね。
→最近の過去問には出題なし。
③ 労働安全衛生規則第242条の2 支柱の脚部の固定、根がらみの取付け等支柱の脚部の滑動を防止するための措置を講ずること。と定められています。よってこの③も誤り。こちらも最近の過去問にはありませんでした。
(平成18年)型枠の組立ては、これらの荷重を受ける下部のコンクリートが有害な影響を受けない材齢に達してから開始する。
→こちらは一応過去問にありますが、古いですね。
公共建築工事標準仕様書にも記載のある内容です。
配筋、型枠の組立又はこれらに伴う資材の運搬、集積等は、これらの荷重を受けるコンクリートが有害な影響を受けない材齢に達してから開始する。
(平成23年)柱型枠の組立てにおいて、型枠の精度の保持を目的のひとつとして、足元は桟木で固定した。
→こちらも平成23年と少し古いです。この問題は少し難しかったかもしれませんね。
この問題では過去問から見ると確実にわかるのは選択肢①のみ。少し難問です。

コンクリート工事

NO.57 コンクリートの養生に関する記述として, 不適当なものを2選べ。ただし, 計画供用期間の級は標準とする。
  1. 打込み後のコンクリートが透水性の小さいせき板で保護されている場合は, 湿潤養生と考えてもよい。
  2. コンクリートの圧縮強度による場合,  柱のせき板の最小存置期間は,圧縮強度が3N/mm2 に達するまでとする。
  3. 普通ポルトランドセメントを用いた厚さ18cm以上のコンクリート部材においては、コンクリートの圧縮強度が 10 N/mm2 以 上 になれば、以降の湿潤養生を打ち切ることができる。
  4. コンクリート温度が2℃ を下回らないように養生しなければならない期間は、コンクリート打込み後2日間である。
  5. 打込み後のコンクリート面が露出している部分に散水や水密シートによる被覆を行 うことは、初期養生として有効である。
解答・解説
(解答)2,4
(解説)こちらも過去問から。
(平成24年)打込み後のコンクリートが透水性の小さいせき板で保護されている場合は、湿潤養生と考えてもよい。
(平成27年)コンクリートの圧縮強度による場合,  柱のせき板の最小存置期間は,圧縮強度が3N/mm2 に達するまでとした。
→こちらは公共建築工事標準仕様書にもありますが、コンクリートの圧縮強度による場合,  柱のせき板の最小存置期間は,圧縮強度が5N/mm2 に達するまでとあります。こちらは誤りですね。
(平成30年)
普通ポルトランドセメントを用いた厚さ18cm以上のコンクリート部材においては、コンクリートの圧縮強度が 5 N/mm2 以 上 になれば、以降の湿潤養生を打ち切ることができる。
→こちらは誤りで、問題分のコンクリートの圧縮強度は 10 N/mm2 以上が正しいです。
(平成29年)コンクリート温度が2℃ を下回らないように養生しなければならない期間は、コンクリート打込み後2日間である
→平成29年と同じ内容ですが、2℃を下らないようにしなけらばならない期間は打込み後5日間ですね。④は誤りですね。
(平成21年)打込み後のコンクリート面が露出している部分に散水や水密シートによる被覆を行うことは、初期養生として有効である。
さて、こちらの問題は①と⑤は古い過去問からの問題ですが、②~④で正解を導きたいところですね。

 

まとめ

今回は躯体工事(及び一部施工管理)の3問を見てきました。

施工管理法の応用能力問題』の出題は、一昨年スタートしたばかりの問題ですが、基本的に以前の学科試験時代と求められる知識に大きな違いはありません。

令和2年以前の学科試験における過去問で言うと、

  • 問題21~問題33の躯体工事の分野をしっかり取り組んでおくこと
  • 施工管理法の分野もしっかり押さえておく。

ことが重要です。

特に解答が五肢二択なので、この分野についてはある程度深堀りして、記憶をしっかり定着しておくことが大切です。

 

最初にも書いた通り、他の問題は余裕で80%以上の正答率を取れたけど、この『施工管理法応用問題』が3問しか取れなかった、というのは勿体ないですね。

しっかり対策を取っておきたいですね。

次回は、『施工管理法の応用能力問題』の仕上げ工事について取り上げたいと思います。
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