前回の記事では、1級建築施工管理技士の第一次検定対策として『施工管理法の応用能力問題』の主に躯体工事の問題を取り上げました。
今回は、昨年及び一昨年に出題された6問のうち3問の仕上げ工事について取り上げたいと思います。
この『施工管理法の応用問題』自体は、過去問としては2年分の計12問しかありません。
ただし、どういった問題が出題されているの?という事を理解しておくことで、自分の試験対策への反映が可能です。
是非意識して取り組んで頂きたい部分です。
前回も書いた通り、この『施工管理法の応用能力問題』の6問で60%以上の合格基準に達しないと、他の問題が100%出来ても資格試験としては不合格です。
問題数は少ないもののしっかりと準備しておきたい分野ですね。
目次
施工管理法の応用能力の問題(仕上げ工事)への取組み
ここ2年の過去問題を見る限り、出題されるのは、
- 躯体工事(改修含む) 2~3問
- 仕上げ工事(改修含む) 2~3問
- 施工管理関連の問題 1問 (昨年は材料保管)
の構成が今年も続くのではないかと思います。(保証は出来ませんが)
この問題が他の問題より少し難易度が高いのは四肢一択ではなく五肢二択で、二択とも正答する必要があることです。
たまたま正解した、という確率も当然低くなります。
ここ2年間に出題された問題のうち仕上げ工事だと、
問題 | 年次 | 工種 | 内容 |
58 |
令和4年
|
金属工事 | 軽量鉄骨壁下地 |
59 | 塗装工事 | コンクリート素地面の各種塗装 | |
60 | 外壁改修工事 | 小口タイル張り外壁面の調査方法と改修方法 | |
58 |
令和3年 |
防水工事 | 屋根保護アスファルト防水工事 |
59 | 建具工事 | 鋼製建具工事 | |
60 | 内装改修工事 | 既存床仕上げ材の撤去及び下地処理 |
でした。なので本年度以降は、上記以外にもタイル工事やガラス工事、内装工事など様々な範囲からの出題が想定して準備しておく必要があります。
では、昨年及び一昨年の出題のチェックです。
令和3年の出題(仕上げ工事)
防水工事
No.58 屋根保護アスファルト防水工事に関する記述として,不適当なものを2つ選べ。
- コンクリート下地のアスファルトプライマーの使用量は,0.2 kg/m2 とした。
- 出隅及び入隅は,平場部のルーフィング類の張付けに先立ち,幅150mm のストレッチルーフィングを増張りした。
- 立ち上がり部のアスファルトルーフィング類を張り付けた後,平場部のルーフィング類を150mm 張り重ねた。
- 保護コンクリート内の溶接金網は,線径 6.0 m、網目寸法 100 mmのものを敷設した。
- 保護コンクリートの伸縮調整目地は,パラペット周辺などの立上り際より600 mm 離した位置から割り付けた。
- 解答・解説
- (解答)2,3
(解説)過去問に同様に出題されているのは3問です。その3問から正答は導き出せます。
①コンクリート下地の際のアスファルトプライマー使用量は0.2kg/㎡です。(ALC下地は0.4kg/㎡)
②(平成27年)出隅及び入隅は,平場部のルーフィング類の張付けに先立ち,幅150mm のストレッチルーフィングを増張りした。
⇒正解は、『幅300mmのストレッチルーフィングを増張りした。』
③(平成29年)平場部のアスファルトルーフィング類の重ね幅は、縦横とも100mm程度とする。
⇒150mmではなく100㎜が正しい。
④(平成27年)保護コンクリート内に線径 6.0 mm網、網目寸法 100 mmの溶接金網を敷設した。
⑤平場の屋根防水保護層は、伸縮調整目地を設ける。伸縮調整目地の割付けは、周辺の立上り部の仕上り面から600mm程度とし、中間部は縦横間隔3,000mm 程度とする。※公共工事建築標準仕様書より
建具工事
No.59 鋼製建具工事に関する記述として,不適当なものを2 つ選べ。
- 内部建具の両面フラッシュ戸の見込み部は,上下部を除いた 2方を表面板で包んだ。
- 外部建具の両面フラッシュ戸の表面板は,厚さを 0.6 mm とした。
- 両面フラッシュ戸の組立てにおいて,中骨は厚さを l.6 mm とし,間隔を300 mm とした。
- ステンレス鋼板製のくつずりは,表面仕上げをヘアラインと し,厚さを1.5 mm とした。
- 枠及び戸の取付け精度は、ねじれ,反り,はらみともそれぞれ許容差を,4 mm 以内とした。
- 解答・解説
- (解答)2,5
(解説)過去問から4問出題されています。(但し⑤は平成25年と少し古い)
①内部に面する戸は、上下部を除き二方の見込み部を表面板で包む。(二方曲げ)
外部に面する戸は、下部を除き三方の見込み部を表面板で包む。 (三方曲げ)
※建築工事監理指針より
②(令和元年)外部に面する両面フラッシュ戸の表面板は、鋼板製のものを用い、厚さを0.6mmとした。
正解は、『表面板は厚さ1.6mmとする』が正しいです。0.6mmは薄いですね(笑)
③(平成29年)鋼製軽量建具に使用する戸の力骨は、厚さ1.6mmとした。
④(令和元年)ステンレス鋼板製くつずりは、表面仕上げをヘアラインとし、厚さを1.5mmとした。
⑤(平成25年)枠及び戸の取付け精度は, ねじれ, 反り, はらみともそれぞれ許容差を 2 mm 以内とした。
⇒許容差2㎜が正しいです。
内装改修工事
No.60 内装改修工事における既存床仕上げ材の撤去及び下地処理に関する記述 として,不適当なものを2 つ選べ。
ただし,除去する資材は,アスベストを含 まないものとする。
ただし,除去する資材は,アスベストを含 まないものとする。
- ビニル床シートは,ダイヤモンドカッターで切断し,スクレーパーを用いて撤去 した。
- 磁器質床タイルは,目地をダイヤモンドカッターで縁切りし,電動斫り器具を用いて撤去した。
- モルタル塗り下地面の既存合成樹脂塗床材の撤去は,下地モルタルを残し ,電動研り器具を用いて下地モルタルの表面から塗床材のみを削り取った。
- 既存合成樹脂塗床面の上に同じ塗床材を塗り重ねるため,接着性を高めるよう,既存仕上げ材の表面を目荒しした 。
- 新規仕上げが合成樹脂塗床のため,既存床材撤去後の下地コンクリート面の凹凸部は,エポキシ樹脂モルタルで補修した。
- 解答・解説
- (解答)1,3
(解説)内装改修工事については、全て過去問で出されている内容ばかりです。確実に得点確保したいですね。
①(令和元年)ビニル床シートは,ダイヤモンドカッターで切断し,スクレーパーを用いて撤去 した。
⇒正解は、『ビニル床シート、ビニル床タイル、ゴム床タイル等の除去は、カッター等で切断し、スクレーパー等により他の仕上材に損傷を与えないよう行う。』
※公共建築改修工事標準仕様書より
②(令和元年)磁器質床タイルは,目地をダイヤモンドカッターで縁切りし,電動はつり器具を用いて撤去した。
③(平成29年)モルタル塗り下地面の既存合成樹脂塗床材の撤去は,下地モルタルを残し ,電動研り器具を用いて下地モルタルの表面から塗床材のみを削り取った。
⇒正解は、『除去範囲は、下地がモルタル塗りの場合はモルタル下地共、コンクリート下地の場合はコンクリート表面から3mm程度とする。』
モルタル下地を残してはダメですね。 ※公共建築改修工事標準仕様書より
④(平成29年)既存合成樹脂塗床面の上に同じ塗床材を塗り重ねるので,接着性を高めるため,既存仕上げ材の表面を目荒しした 。
⑤(平成29年)既存床材撤去後の下地コンクリート面において,凸凹部の補修はエポキシ樹脂モルタルで行った。
令和4年の問題(仕上げ工事)
金属工事
NO,58 軽量鉄骨壁下地に関する記述として、不適当なものを2つ選べ。
- スタッドは, 上部ランナーの上端とスタッド天端との隙間が 15 mm となるように切断した。
- ランナーは、 両端部を端部から 50 mm 内側で固定し, 中間部を 900 mm 間隔で固定した。
- 振れ止めは、床ランナーから 1,200 mm 間隔で、スタッドに引き通し、固定した。
- スペーサーは、スタッドの端部を押さえ、間隔 600 mm 程度に留め付けた。
- 区分記号 65 形のスタッド材を使用した袖壁端部の補 強 材は、垂直方向の長さが 4.0 mを超えたため、スタッド材を2本抱き合わせて溶接したものを用いた。
- 解答・解説
- (解答)1,5
(解説)こちらも過去問から見ていきます。
①(令和2年、平成28年)スタッドは, スタッドの天端と上部ランナーの上端との隙間が 15 mm となるように切断した。
→上部ランナーの上端とスタッドの天端の隙間は10mm以下とする。(建築工事監理指針より)
よって①は誤りですね。
②(平成30年)ランナーは、 両端部を端部から 50 mm 内側で固定し, 中間部は 900 mm 間隔で固定した
③(平成30年)振れ止めは、床ランナーから 1,200 mm 間隔で、スタッドに引き通し、固定した。
④(平成28年)スペーサーは、スタッドの端部を押さえ、間隔 600 mm 程度に留め付けた。
⑤(平成29年)区分記号 65 形のスタッド材を使用したそで壁端部は、垂直方向の補強材の長さが 4.0 mを超えるので、スタッド材を2本抱き合わせて溶接したもので補強した。
→65形で補強材の長さが4.0mを超える場合、同上の補強材を2本抱き合わせてたものを用いる。(建築工事監理指針より)
スタット材ではなく補強材が正解なのでこの⑤も誤りですね。この問題は頻出問題なので、確実に正解を取りたいですね。
塗装工事
NO,59 コンクリート素地面の塗装工事に関する記 述 として、不適当なものを2つ選べ。
- アクリル樹脂系非水分散形塗料塗りにおいて、気温が20 ℃であったため、中塗りの工程間隔時間を2時間とした。
- 常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗りにおいて、塗料を素地に浸透させるため、下塗りはローラーブラシ塗りとした。
- 2液形ポリウレタンエナメル塗りにおいて, 塗料は所定の可使時間内に使い終える量を調合して使用した。
- 合成樹脂エマルションペイント塗りにおいて, 流動性を上げるため, 有機溶剤で希釈して使用した。
- つや有り合成樹脂エマルションペイント塗りにおいて、塗装場所の気温が5℃ 以下となるおそれがあったため、施工を中止した。
- 解答・解説
- (解答)1,4
(解説)こちらも過去問から。
①(平成25年)アクリル樹脂系非水分散形塗料塗りにおいて、気温が 20 ℃ であったため、中塗り後2時間の間隔をあけて次の工程に入った。
→これも誤りで中塗り後3時間が正解です。
②(平成29年)常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗りの下塗りにおいて、塗料を素地に浸透させるため、ローラーブラシ塗りとした。
③(平成25年)2 液形ポリウレタンエナメル塗りにおいて、塗料は所定の可使時間内に使い終える量を調合して使用した。
④(令和元年)合成樹脂エマルションペイント塗りにおいて, 塗料に流動性を持たせるため, 水で希釈して使用した。
→令和元年のこちらが正解で、流動性を上げるため水で希釈が正しいので、問題の④は誤りですね。
⑤(平成25年)つや有り合成樹脂エマルションペイント塗りにおいて、塗装場所の気温が 5 ℃ 以下となるおそれがあったので、施工を中止した。さてこちらは3問が少し古い平成25年からの問題ですが、一般知識として③と⑤が正しいというのは理解しておきたいですね。②は過去問からわかるので、消去法で①④を導き出せる力のある方は、素晴らしいです。
内装改修工事
NO,60 鉄筋コンクリート造建築物の小口タイル張り外壁面の調査方法と改修工法に関する記述として, 不適当なものを2つ選べ。
- 打診法は, 打診用ハンマー等を用いてタイル張り壁面を打撃して, 反発音の違いから浮きの有無を調査する方法である。
- 赤外線装置法は, タイル張り壁面の内部温度を赤外線装置で測定し, 浮き部と接 着 部における熱伝導の違いにより浮きの有無を調査する方法で, 天候や時刻の影 響を受けない。
- タイル陶片のひび割れ幅が 0.2 mm 以 上 であったが, 外壁に漏水や浮きが見られなかったため, 当該タイルを斫って除去し, 外装タイル張り用有機系接着剤によるタイル部分張替え工法で改 修 した。
- 外壁に漏水や浮きが見られなかったが, 目地部に 生 じたひび割れ幅が 0.2 mm 以 上 で一部目地の欠損が見られたため, 不良目地部を斫って除去し, 既製調合目地材による目地ひび割れ改 修 工法で改修した。
- 構造体コンクリートとモルタル間の浮き面積が1箇所当たり 0.2 m2 程度、浮き代が 1.0mm 未満であったため, アンカーピンニング全面セメントスラリー注入工法で改修した。
- 解答・解説
- (解答)2,5
(解説)こちらも過去問より
①(平成30年)打診法は, 打診用ハンマーなどを用いてタイル張り壁面を打撃して, 反発音の違いから浮きの有無を調査する方法である。
②(平成30年)赤外線装置法は, タイル張り壁面の内部温度を赤外線装置で測定し, 浮き部と接着部における熱伝導の違いにより浮きの有無を調査する方法で, 天候や時刻の影響を受けない。
→こちらは誤りですね。浮き部と健全部(接着部)における表面温度の差を生じすることを利用することで、剥離部を検出します。内部温度というのは誤りですね。
③(平成24年)タイル張り外壁において、漏水がなく、浮きも見られず、単にタイル表面のひび割れ幅が0.3 mm だったので、美観上該当タイルをはつって除去し、タイル部分張替え工法で改修した。
→同じ問題ではありませんが、ひび割れ幅0.2mm以上の場合は、当該タイルを斫って張替え工法で改修する。
④こちらは過去問には出題がありませんが、この記述は正しいです。
⑤(令和2年)小口タイル張り仕上げにおいて、1箇所当たりの下地モルタルと下地コンクリートとの浮き面積が0.2㎡の部分は、アンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法で改修した。
→同じ内容ではありませんが、0.25㎡未満の場合(浮き代は1.0mm未満)は、部分エポキシ樹脂注入工法で改修します。よってこの⑤は誤りです。セメントスラリー注入工法は浮き面積が0.25㎡以上かつ浮き代が1.0mm以上の場合ですね。少し難しい問題ですね。
まとめ
以上、2回に渡り計12問を取り上げました。
昨年のこの問題よりわかることは、下記の通り。
- 施工管理法の応用能力問題は『施工』関連の躯体工事・仕上げ工事+施工管理法の分野より6問出題される。
- 問題の各選択肢は躯体工事・仕上げ工事の過去問で出題履歴のあるものが多い。(但し古い過去問からも出題される)
- 上記の選択肢及び消去法から、正答は導き出せる問題も多い。
- 躯体及び仕上げの用語・数値は正確に記憶しておく必要がある。
- 躯体及び仕上げについては余裕があれば、少し古い過去問もチェック出来ればベスト
令和3年の第一次検定の合格率は例年と比べて低め(36.0%)でしたが、令和4年は46.8%と合格率は高めでした。
上記をしっかり取り組んでいけば問題ないと思われます。
令和2年までの学科試験は、
・躯体工事は13問の出題のうち5問解答すれば良い。
・仕上げ工事は12問の出題のうち5問解答すれば良い。
・仕上げ工事は12問の出題のうち5問解答すれば良い。
つまりは、この分野については、苦手分野の工種は捨てても大きな影響はありませんでした。
ところが令和3年以降は、
・躯体工事は10問出題のうち7問解答
・仕上げ工事は9問出題のうち7問解答
・施工管理法の応用問題(躯体・仕上げ)は6問出題に対してすべて解答
⇒合計20問の解答が必要。
・仕上げ工事は9問出題のうち7問解答
・施工管理法の応用問題(躯体・仕上げ)は6問出題に対してすべて解答
⇒合計20問の解答が必要。
と特に躯体工事及び仕上げ工事については重点を置いて取り組む必要があります。
ただこの分野は2次検定でもとても重要な部分となっているので、やりすぎておいても全く損はありません。
しっかり深い知識を身に着けておけば2次検定にも特に役立ちます。
この1次検定については、この『施工管理法の応用問題』の対策は本当に大切です。しっかり取り組んでおきましょう。