第一次検定(旧学科試験)の過去問の取り組みシリーズの第6回です。
前回は主に施工計画や工程管理を取り上げました。
今回も前回に続き、施工管理法に関する問題、その中から品質管理の用語、品詞管理(管理値)、公衆災害防止対策、足場の問題から抽出しました。
何度も書きますが、1級建築施工管理技士第一次検定の勉強で一番重要なのは過去問の反復です。
繰り返し出題されている問題の取りこぼしは避けるようにしたいところですね。
施工管理法に関する出題分野の分析
これは前回の第5回と同じ内容ですが、こちらでも記しておきます。
過去3年間の出題分野ですね。
まずは午前の部の5問より。
番号 | 令和4年 | 令和3年 | 番号 | 令和2年 | 令和1年 |
40 | 仮設計画 | 事前調査・準備作業 | 46 | 仮設計画 | 事前調査 |
41 | 仮設計画(設備) | 仮設計画(設備) | 47 | 仮設計画(設備) | 仮設計画(設備) |
42 | 施工計画 | 材料の取扱い | 48 | 施工計画 | 施工計画(解体工事) |
43 | 建設工事の記録 | 労働基準監督署長への届出(安衛法) | 49 | 施工計画(躯体) | 施工計画(耐震改修) |
44 | 工期と費用 | 工程計画 | 50 | 施工計画(仕上) | 施工計画(仕上改修) |
次に午後の部の試験問題です。
番号 | 令和4年 | 令和3年 | 番号 | 令和2年 | 令和1年 |
45 | 工程計画及び工程表 | 工程計画(鉄骨工事) | 51 | 材料の保管 | 材料の保管 |
46 | タクト手法 | ネットワーク工程(フロート) | 52 | 建設工事の記録 | 労働基準監督署長への届出(安衛法) |
47 | 品質管理 | 品質管理 | 53 | 工程管理 | 工期と費用 |
48 | 試験と検査(鉄筋コンクリート工事) | 品質管理(図表) | 54 | 工程計画 | 工程計画 |
49 | 振動・騒音対策(鉄筋コンクリート造の解体工事) | 品質管理の検査 | 55 | タクト手法 | 工程計画(鉄骨工事) |
50 | 労働災害 | 公衆災害防止対策 | 56 | ネットワーク工程 | ネットワーク工程(用語) |
51 | 公衆災害防止対策 | 作業主任者の選任(安衛法) | 57 | 品質管理 | QC工程表 |
52 | 作業主任者の職務(安衛法) | 足場 | 58 | 品質管理の用語 | 品質管理の用語 |
53 | 事業者の講ずべき措置(安衛則) | 特定元方事業者の措置(安衛則) | 59 | 管理値 | コンクリートの管理値 |
54 | 酸素欠乏危険作業 | クレーン | 60 | 品質管理の検査 | 品質管理(図表) |
61 | 試験・検査(コンクリート) | 品質管理の検査 | |||
62 | 試験(タイル工事) | 外観検査(ガス圧接) | |||
63 | 振動・騒音対策(鉄筋コンクリート造の解体工事) | 試験・検査(仕上げ工事) | |||
64 | 労働災害 | 労働災害 | |||
65 | 公衆災害防止対策 | 公衆災害防止対策 | |||
66 | 作業主任者の職務(安衛法) | 作業主任者の選任(安衛法) | |||
67 | 足場 | 足場 | |||
68 | 事業者が行うべき点検(安衛則) | 事業者の講ずべき措置(安衛則) | |||
69 | ゴンドラ作業 | クレーン | |||
70 | 酸素欠乏危険作業 | 有機溶剤業務 |
では具体的に過去の出題を見ていきます。
1.施工管理法〜品質管理に関する出題
本日最初の問題は品質管理(用語)に関する問題です。
この『用語』は一般常識として何となく理解出来るものと、定義をしっかり理解する必要のある用語があります。
令和2年の問題を取り上げます。
【問題】品質管理の用語に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
- 目標値は、仕様書で述べられる、望ましい又は基準となる特性の値のことをいう。
- ロットとは、等しい条件下で生産され、又は生産されたと思われるものの集まりをいう。
- かたよりとは、観測値又は測定結果の大きさが揃っていないことをいう。
- トレーサビリティとは、対象の履歴、適用または所在を追跡できることをいう。
- 解答・解説
- (解答)③
(解説)品質管理の用語の定義は主にJIS Z 8101-2やJIS Q 9000などで定められています。
① 目標値とは、仕様書で述べられる,望ましい又は基準となる特性の値。
※平成30年にも出題されている。
② ロットとは、サンプリングの対象となる母集団として本質的に同じ条件で構成された,母集団の明確に分けられた部分。
※平成26年にも出題。
③ かたよりとは、試験結果又は測定結果の期待値と真の値との差。
⇒大きさが揃っていないのは『ばらつき』である。答えはこの③ですね。
※近似問題が平成28年、平成26年にもあり。(多少引っ掛け的に出題されるので注意)
④ トレーサビリティとは、対象の履歴,適用又は所在を追跡できること。
※平成30年、29年もトレーサビリティは出題されています。トレーサビリティとロットは何となくわかる方もいると思います。
令和3年以外は毎年出題されています。
過去に出題された用語をしっかり理解すればOKだと思います。
2.施工管理法~品質管理(管理値)に関する出題
次は、品質管理(管理値)に関する問題です。こちらも例年、出題頻度の多い問題です。
ちなみに、2次検定の施工経験記述ではこの『品質管理における管理値』をきっちり記述出来ると、ポイントが読みやすくなります。
【問題】建築施工における品質管理に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
- コンクリート工事において、コンクリート部材の設計図書に示された位置に対する各部材の位置の許容差は、±20mmとした。
- コンクリートの受入検査において、目標スランプフローが60㎝の高流動コンクリートの荷卸し地点におけるスランプフローの許容差は、±7.5㎝とした。
- 鉄骨工事において、スタッド溶接後のスタッドの傾きの管理許容差は、3°以内とした。
- 鉄骨梁の製品検査において、梁の長さの管理許容差は、±7.5mmとした。
- 解答・解説
- (解答)④
(解説)こちらは過去問から見ていきましょう。
①(平成29年)コンクリート工事において、コンクリート部材の設計図書に示された位置に対する各部材の位置の許容差は、±20mmとした。
②(令和元年)目標スランプフローが60㎝の高流動コンクリートの荷卸し地点におけるスランプフローの許容差は、±7.5㎝とした。
③(平成26年)鉄骨工事において、スタッド溶接後のスタッドの傾きの管理許容差は、3°以内とした。
④(平成30年)鉄骨梁の製品検査において、梁の長さの管理許容差は、±3mmとした。
⇒この平成30年の管理許容差、±3mmが正解なんです。よって正解は④ですね。
この管理値は名前の通り、正しい数値を記憶する必要があります。
3.施工管理法〜公衆災害防止対策に関する出題
次は公衆災害防止対策に関する問題です。
昨年の令和3年に出題された問題を見ていきましょう。
【問題】市街地の建築工事における災害防止対策に関する記述として、最も不適当なものはどれか?
- 外部足場に設置した工事用シートは、シート周囲を35㎝の間隔で、隙間やたるみが生じないように緊結した。
- 歩行者が多い箇所であったため、歩行者が安全に通行できるよう、車道とは別に幅1.5mの歩行者用通路を確保した。
- 防護棚は、外部足場の外側からのはね出し長さを水平距離で2mとし、水平面となす角度を15°とした。
- 飛来落下災害防止のため、鉄骨躯体の外側に設置する垂直ネットは、日本産業規格(JIS)に適合した網目寸法15mmのものを使用した。
- 解答・解説
- (解答)③
(解説)こちらも過去問から見てきましょう。
①(令和元年)外部足場に設置した工事用シートは、シート周囲を35㎝の間隔で、すき間やたるみが生じないように緊結した。
②(平成29年)歩行者が多い箇所であったため、歩行者が安全に通行できるよう、車道とは別に幅1.5mの歩行者用通路を確保した。
③(平成29年)防護棚は、外部足場の外側から水平距離で2m突き出し、水平面となす角度を15度とした。
※平成29年の問題も同じ内容でしたが、正しくは、『防護棚のはね出しは、水平面に対して20~30°の角度で、足場から水平距離は2m以上とする』
です。(建築工事監理指針より)
④こちらは過去10年に出題されていませんでしたが、正しい内容です。
4.施工管理法〜足場に関する出題
最後に取り上げるのは足場に関する出題です。この足場に関しては毎年出題されると考えていて良いでしょう。
昨年の令和3年の問題を取り上げます。
【問題】足場に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
- 移動はしごは、丈夫な構造とし、幅は30㎝以上とする。
- 枠組足場の使用高さは、通常使用の場合、45m以下とする。
- 作業床は、吊り足場の場合を除き、床材間の隙間は3㎝以下、床材と建地の隙間は12㎝未満とする。
- 登り桟橋の高さが15mの場合、高さの半分の位置に1箇所踊場を設ける。
- 解答・解説
- (解答)④
(解説)こちらも過去問から読み解いていきます。
①(令和元年)移動はしごの幅は、30㎝以上とする。
②(令和元年)枠組足場の使用高さは、通常使用の場合、45m以下とする。
③(平成30年)枠組足場における高さ2m以上に設ける作業床は、床材と建地とのすき間を12㎝未満とした。
(平成27年)単管を使用した本足場における作業床は、幅を40cm以上、床材間の隙間は3㎝以下とする。
この③は上記の2問題より推測が可能かと思います。
④(平成23年)登りさん橋の高さが 15 m であったので、地盤面からの高さ8mの位置に踊場を設けた。
労働安全衛生規則第552条で、『建設工事に使用する高さ8m以上の登り桟橋には、7m以内ごとに踊場を設けること。』と定められているので、この15mの桟橋だと、5mの毎に踊場を設けるべきですね。
この問題は平成23年と少し古い年代に出題されていました。こういった問題を消去法で正解を導き出せると本番でも高得点は間違いないですね。
5.まとめ
従来の学科試験では、この施工管理法は20問出題されて20問全て解答の必要がありましたが、昨年の第一次検定より10問中10問の解答です。
この施工管理法も一通り押さえながらも、より施工の躯体・仕上げに関する問題の対策の強化が必要となっています。
基本的には、過去問題を中心にきっちり読み込んで正しく記憶すれば確実に点数を取れるところでもあります。工程管理・品質管理・安全管理とそれにまつわる工事に関わる施工管理全般の出題となっていますが、勉強すれば難易度は高くありません。
- 用語とその意味をしっかり覚える。
- 施工や安全に関わる分野は数値をきっちり覚える。
- ネットワーク工程は2次検定を踏まえて基本概念をりかいする。
このあたりがポイントになってくるかと思います。
出題は上記を見てもわかるように、各選択肢の内容は過去問を踏襲しているものが大半です。全て記憶していないくてもある程度消去法でもわかる取り組みをしておきたいところですね。
そしてこの5月〜試験までの勉強量が、その後の第二次検定対策の勉強にも役に立ってきますので、これからの期間を大事に過ごしていきましょう。
次回は法規の取組みです。