令和4年(2022年)の1級建築施工管理技士 第二次検定を振り返る

令和4年度の1級建築施工管理技士の第二次検定10月16日(日曜日)に実施されました。

 

問題をざっと振り返ると、施工経験記述は自分で文章を組み立てる力が必要だし、ネットワーク工程はじっくり考えて、頭を整理して計算する問題で、いずれも応用力の必要な問題が増えているように思います。

基本的にはしっかりと試験対策が必要だし、でもそこにたどり着くノウハウを当サイトとしても提供したいと思った本年度の問題でした。

では具体的に振り返っていきたいと思います。(この記事で解答・解説はありません)

2年目を迎えた第二次検定

昨年の令和3年度より、施工管理技士補及び施工管理技士という2つの資格体制になると同時に、

  • 第一次検定を合格すると施工管理技士補(監理技術者補佐となれる)
  • 第二次検定を合格すると施工管理技士(監理技術者になれる)

という資格試験に変わっているのは当サイトでも再三書いています。(以前は施工管理技士資格しか存在せず、学科・実地の両方の合格で達成できる仕組み)

 

令和4年はこの第二次検定に変わって2年目の試験でした。

 

以前の実地試験と比べてどうなのか?昨年の第二次検定からどう変わったの?という2つの視点から書いていきたいと思います。

問題の解答・解説は下記記事を参照ください。

 

難易度は?

さて、例年と比べて難易度はどうなの?という点について。

これは人によっては例年より難しいと感じるし、また別の人によっては比較的取り組みやすかったと思う人もいると思います。

問題 出題 内容
施工経験記述
(施工の合理化)
・施工の合理化が出題され、例年と異なるのは3つの事例(今までは2つの事例)が必要で、懸念された品質と言う問いは少し書きにくかったと思われる。
・問題1-2は建設業の課題である労働者確保について問われる。
⇒普段より問題意識をもって人員確保、工法検討などを行っていないと難しく感じたのではないか?
2 記述問題
(安全管理)
・例年の安全管理の記述の準備が出来ていれば易しい問題だと言って良い。
3 施工管理
(ネットワーク工程)
・問題内容は作業内容、総所要日数、フリーフロート、工程変更に伴う日数など例年通りではあるが、決して簡単とは言えず、時間をかけて丁寧に解かないと計算ミス、勘違いやミスを誘発する難しい問題と言って良いと思う。
4 記述問題(仕上げ工事) ・予定通りの施工上の留意事項の問題だが、過去問対策を行っていれば確実に3つは記述しておきたい問題であった。
⇒例年度と比べオーソドックスな内容だったと思う。
5 五肢一択(躯体工事) ・こちらも予定通りの選択問題であったが、昨年は5つの内1つ不適当な語句・数値を選ぶ問題から、3つの空欄の正しい語句・数値を1つの選択肢より選ぶ問題になった。
⇒個人的にはこちらの方が分かりやすいと思ったがどうだろうか?またこちらも過去に出題された内容が大半だったので、過去問対策で高得点は確保できる問題ではあったように思う。
6 五肢一択(建築法規) ・法規は3問全て既出問題だったので、こちらも確実に高得点がとれたはずだ。
個人によって得手不得手の分野はあるので一概に言えないが、出題レベルはほぼ例年と同じと言って良いだろうし、
・問題2 安全管理
・問題4 仕上げ工事
・問題5 躯体工事
・問題6 建築法規

この4つは過去問を重視して取り組んでおけば、及第点を取っておきたいところです。(合格するためには)

※実際に何名かの解答をみさせて頂いたが、ここで合格点を割っている人は少なかったように思います。
但し施工経験記述については、結構苦戦している人も多いように感じます。
問題2~6で合格ラインをある程度確保しながら、施工経験記述が大崩れしていない事が合格へのラインにつながるのではないでしょうか。

各問題をチェック

施工の合理化

当サイトで提供している施工経験記述添削サービスですが、今年は昨年以上のお申込みを頂きました。

本サービスでは、

  • 建設副産物、品質管理、施工の合理化の3セット
  • 上記のうち2セット(申込者全員が建設副産物+施工の合理化)
  • 単品販売(申込者は全て建設副産物単体)

を展開していましたが、今年は単品販売の申込者は6%と少なかったです。

 

おそらく、単体申込者の方の多くは、ある程度しっかり記述出来る方が多かったので、『施工の合理化』は独学でも対応できるから、少し苦手な『建設副産物』のみを申し込んだ感じです。

そして昨年の事もあるので、今年の受検者はある程度『施工の合理化』が出るかもしれないと思っている方は多かったと思います。

 

問題の内容は、

  1. 工種名
  2. 現場作業の軽減のための実施した内容と軽減が必要になった具体的な理由
  3. ②を実施した際に懸念された品質と品質を確保するための施工上の留意事項

ちなみに、令和2年の『施工の合理化』は

  1.  工種又は部位等
  2.  実施した内容と品質確保のための留意事項
  3.  実施した内容が施工の合理化となる理由
  4. ③の施工の合理化以外に得られた副次的効果

そして平成29年の『施工の合理化』は

  1.  工種又は部位等
  2.  施工の合理化が必要となった原因実施した内容
  3.  実施する際に確保しようとした品質と留意事項
  4.  実施したことにより施工の合理化ができたと考えられる理由

となっています。基本的には平成29年の問題に似ていますね。(今年は施工の合理化理由の問題はなかった)

また大きく異なるのは、例年は2つの事例で良かったのですが、今年は3つの事例の記述が必要だったこともあり、戸惑った方もいるかもしれませんね。

 

記述例です(文章はかなり端折っています)

① 左官工事(セルフレベリング)
② 左官モルタルの熟練工の確保が難しかったので、セルフレベリングで施工した。
③ セルフレベリングは硬化するまで室内に風が通るとしわや気泡跡が残る恐れがあったので、窓を閉めて風が通らないよう留意した。

 

ちなみに問題1-2も

  1. 労働者の確保を困難にしている建設現場が直面している問題や課題点
  2. ①に効果があると考える建設現場での取組や工夫

と少し変化球できましたね。

要するに、

・熟練工による高齢化が進み、著しい人手不足で品質確保するための人員確保が難しい(問題)
⇒熟練工が不要な工法や材料の見直しなどを行って対処している。

という施工の合理化的な記述が出来るとOKですね。

 

今年のこの問題を読み解くと、

事例を3つ求められている通り、現場経験がある程度豊富にあり、自分なりに対応してきた経験力とそれを表現する記述力が必要であり、まだ問題2は、普段より建設業に対して問題意識を持ちながら施工管理に取り組んでいるか?という事が求められているように思います。

⇒少なくとも、準備したネタをうまく記述するだけでは少し難しくなっているのも事実ですね。

安全管理

今年は予定通り安全管理の問題が出題されました。

  1. 墜落、転落による災害 (平成30年)
  2. 崩壊、倒壊による災害 (平成26年)
  3. 移動式クレーンによる災害

問題2は比較的オーソドックスでした。①は平成30年、②は平成26年に出題されており、③の移動式クレーンは平成26年の重機関連災害と近似問題とも言えるので、過去問をしっかり取り組んでいれば、6問中4~5問を書きたいところですね。

 

令和5年はおそらく仮設計画となるでしょう。

工程管理(ネットワーク工程)

私も毎年問題を解いていますが、結構時間がかかりました(笑)

 

決して難問というわけではないのですが、問題を良く熟読して解かないと勘違いを誘発します。

フリーフロートは1日と勘違いしやすい問題になっているし、変更した工程も丁寧に計算しないと間違えてしまいそうですね。

 

ネットワーク工程については、平成29年度より出題されていますが、その当時と比べると問題は確実に難しくなっていますね(笑)

この工程を見てもわかると思います(笑)

また工程の進め方もA作業とB作業を同時に進められる流れとそれぞれ同じ班が対応する進め方など、年次によって異なります。

 

なので各過去問をしっかり反復して、理解できるまで取り組む事が重要です。

⇒理解できるようになると、ここで高得点を取ることが可能ですね。

 

記述問題(仕上げ工事)

  1. 屋根保護防水断熱工法における保護層の平場部 ⇒平成28年
  2. 木製床下地にフローリングボード又は複合フローリングの釘留め工法 ⇒平成26年
  3. 外壁コンクリート面の外装合成樹脂エマルション系薄付け仕上塗材(外装薄塗材E)仕上げ  ⇒平成30年
  4. 鉄筋コンクリート造の外壁に鋼製建具

例年、仕上げ工事は同じ工事においても工法が多いことから重複及び近似問題が少ない傾向にあり、少し対策も難しかったのですが、令和4年の問題については比較的取り組みやすい問題だったように思います。

①②③については、過去問で対応できる内容でした。

 

鋼製建具も第一次検定の知識からでも少しは書けたのではないでしょうか?

及第点は取りたい問題でしたね。

躯体工事

躯体工事は予定通りの五肢一択の選択問題でしたが、先述した通り、昨年とは異なる問題でした。

  1. 地盤の平板載荷試験
  2. 根切り工事
  3. 場所打ちコンクリート杭地業のオールケーシング工法
  4. 鉄筋のガス圧接
  5. コンクリートの側圧
  6. 型枠の組立
  7. 暑中コンクリート
  8. 鉄骨工事(スタッド溶接)

以上の8問が出題されました。

・令和3年 5つの下線部より、 最も不適当な語句又は数値を選んでそれに替わる適当な語句又は数値を,1つ選ぶ
・令和4年 3つの空欄を、5つの選択肢の中から最も適当な組み合わせを1つ選ぶ。
令和2年までは、誤った語句・数値を一つ選んで正しい語句・数値を記述する内容だったわけですから、選択できるこの問題は以前より正答率の上がる内容だと思います。そして問題も一通りチェックしましたが、過去問より出題されている問題が多いので、ここも確実に得点を確保しておきたい内容でした。

法規

  1. 建設業法 第24条の6
  2. 建築基準法施行令 第136条の5
  3. 労働安全衛生法 第29条の2

この法規も今年はオーソドックス、全て既出で比較的に頻出されている問題でしたね。

 

まとめ

さてだらだらと書いてしまいましたが、令和4年のこの問題から、次年度以降の重点取り組みの考え方について少し触れておきます。

  • 施工経験記述は、より現場経験(指導経験的な立場)の記述が求められており、いわゆる応用力が問われる。
  • 工程については、基本的な工程を読み取る力と考える力が問われる(これも応用力と言ってよいでしょう)
  • それ以外の各記述及び選択問題は過去問を重視した取り組み

 

と言った感じですね。つまりは、

綜合的な難易度は基本的に変わらないけど、

  1. 応用力(施工経験記述)
  2. じっくり考えて解く力(工程)
  3. 基本的な知識及び記述力(上記以外の問題) ⇒過去問重視

とバランスの取れた能力が必要になってくるのではないかと思います。

特に施工経験記述については、過去の問題に取り組むだけでなく、もう少し記述の引き出しを持っておかないと苦労することになりそうです。

当サイトでも施工経験記述添削を行っていますが、サービス内容は少し変えようかと検討中です。

 

引き続き、来年度以降の対策記事を順次アップデートしていきたいと思います。

 

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