令和6年度に向けて、施工管理技士の技術検定の受検資格の見直しが予定されています。現在、パブリックコメントを経て最終的には施行される流れになるかと思いますが、正式決定のリリースではないことだけご了承下さい。
令和5年の2月8日の国土交通省より発表されている、技術検定改正案に関する運用イメージ及び5月12日に発表された「施工技術検定規則及び建設業法施行規則の一部を改正する省令」等の公布~建設業における技術者制度の見直しが行われます~
それ以降、新たな情報があれば順次本記事にもアップデートしていきたいと思います。
今回の記事はこちらの国土交通省の資料を参照しています。(外部コンテンツ)
基本的な考え方
まずは国土交通省が発表している、技術検定制度の改正に関する基本的な考え方を下記の通りまとめておきます。
- 監理技術者等として施工管理を行うためには一定の実務経験が必要であることを前提とし、試験制度を知識面及び経験面から再構成する。
- 基礎的な知識及び能力の判定を目的とする技術検定の第1次検定は、試験内容の充実を図った上で、一定年齢以上の全ての者に受検資格を認める。併せて、専門性の高い学校課程修了者には試験の一部免除を可能とする。
- 第1次検定合格後の実務経験を、施工管理に関する基礎的な知識及び能力を有した上での実務経験として評価する。
- 技術上の管理及び指導監督に係る知識及び能力の判定を目的とする第2次検定は、基礎的な知識及び能力を有した上での施工管理に関する一定の実務を経験していることを前提とし、この経験を有する者に受検資格を認める。
- 受検資格として必要な実務経験の最低期間は、従来の指定学科卒業者(1級は大学、2級は高校相当)と同程度を基本としつつ、1級はその経験する工事の性質に応じてその期間を加減する。
- 不正受検の事例として「認められない実務経験による受検」、「実務経験期間の不足」、「実務経験期間の重複」が多く発生したことから、実務経験として認められる範囲とその証明方法について見直しを行い、明確化と厳格化を図る。
少しわかりにくいですね。(笑)
端折って書くと、
・2次検定は、1次検定に合格している知識・能力を有している前提+一定の実務経験で受検資格を認めるよ。
・専門性の高い学校課程修了者には試験の一部免除をするよ。
と言った感じでしょうか。
令和6年度以降の受検資格要件
新たな受検資格要件
上記に基づき、新たな受検資格は下記の通りとなっています。
第一次検定 | 第二次検定 | |
1級 | 年度末時点での年齢が19歳以上 | ○1級1次検定合格後、 ・実務経験5年以上 ・特定実務経験 1年以上を含む実務経験3年以上 ・監理技術者補佐としての実務経験1年以上 ○2級2次検定合格後 ・実務経験5年以上(1級1次検定合格者に限る) ・特定実務経験(※) 1年以上を含む実務経験3年以上(1級1次検定合格者に限る) |
2級 | 年度末時点での年齢が17歳以上 | ○2級1次検定合格後、実務経験3年以上(建設機械種目については 2年以上) ○1級1次検定合格後、実務経験1年以上 |
特定実務経験とは?
では具体的に、特定実務経験とは?
請負金額4500万円(建築一式工事は7000万円)以上の建設工事において、監理技術者・主任技術者(当該業種の監理技術者資格者証を有する者に限る)の指導の下、または自ら主任技術者として請負工事の施工管理を行った経験
(発注者側技術者の経験、建設業法の技術者配置に関する規定の適用を受けない工事の経験等は特定実務経験には該当しない)
基本的には監理技術者の指導の下の施工管理経験ですね。(一定の請負金額以上の)
受検資格の流れ1(1級の場合)
新たな受検資格をより早く得るために、と言う観点でみていくと、
- 1次検定は受検資格なしで受検できる。(大学生のうちに資格取得も可能)
- ⇒1次合格後、普通に5年間の実務経験を得る。(当然、就職後)
- ⇒1次合格後、実務経験3年以上で、そのうち監理技術者管理の工事の指導の施工管理を1年以上の経験を得る。
- ⇒1次合格後、監理技術者補佐としての実務経験を1年以上。
です。一見、④が最短ルートのようにも思えますが、監理技術者補佐も単純に1次合格すればなれるわけではなく、
建設業法施行令第28条
主任技術者の資格を有する者(法第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者)のうち一級の技術検定の第一次検定に合格した者(一級施工管理技士補)
そうなんです。監理技術者補佐の要件には主任技術者の資格が必要なんです。(単純に、1級1次検定に合格すれば補佐の資格をえるわけではない)
主任技術者は一定の実務経験を有するか2級建築施工管理技士の資格所有者である必要がありますね。
なので、1級建築施工管理技士の資格を持つには、③が早そうです。
- 大学生のうちに、1次検定を合格しておく。
- その後、③の実務経験を得る。
受検資格の流れ2(2級を経由する)
もう一つショートカットする方法です。
- 学生のうちに、2級及び1級の1次検定を合格しておく。(両方ね)
- 就職して、実務経験を1年経験して、2級の2次検定を受けて合格する。(2級建築施工管理技士の資格を得て主任技術者になる)
- 監理技術者補佐として1年以上の経験をして、1級の2次検定を受けて合格する。
最初に取り上げた受検資格の流れを見る限り、これでもいけそうですね。(試験ばっかりで大変ですが)
⇒実際に可能かは要確認ですけどね。
受検資格の追加要件と、試験の免除制度について
例外的に追加する受検資格
基本的な受検資格は先ほど述べた通りですが、それ以外の追加的受検資格もあります。(あくまでも2次検定)
(土木種目) ・技術士第二次試験(建設部門、上下水道部門等)合格後、実務経験5年(特定実務経験1年を含む場合3年) 以上
(建築種目) ・1級建築士試験合格後、実務経験5年(特定実務経験1年を含む場合3年)以上
(電気種目) ・第1種電気工事士試験合格後、実務経験5年(特定実務経験1年を含む場合3年)以上(別途1級1次検定に合格することが必要)
(建設機械種目) ・建設機械操作施工の経験6年以上(別途2級1次検定に合格することが必要)
(土木種目) ・技術士第二次試験(建設部門、上下水道部門等)合格後、実務経験1年以上
(建築種目) ・1級建築士試験合格後、実務経験1年以上
(電気種目) ・電気工事士試験又は電気主任技術者試験合格後、実務経験1年以上
(別途1級又は2級1次検定に合格することが必要)
(電気通信種目) ・電気通信主任技術者試験合格後、実務経験1年以上
(別途1級又は2級1次検定に合格することが必要)
見直しに伴う受検資格の経過措置
当面の間は下記の通り、従来の受検資格も生きています。
・令和10年度までの間は、制度改正前の受検資格要件による2次検定受検が可能
・令和6年度から10年度までの間に、有効な2次検定受検票の交付を受けた場合、令和11年度以降も引き続き同2次検定を受検可能(旧2級学科試験合格者及び同日受検における1次検定不合格者を除く)
・旧2級学科試験合格者の経過措置については従前どおり合格年度を含む12年以内かつ連続2回に限り当該2次検定を制度改正前の資格要件で受検可能
1次検定の一部免除制度
また詳細は良くわかりませんが、下記の通り1次検定の一部の問題の免除制度もあるようですが、これは詳しくは割愛します。
大学の建築学の専門課程卒業者を対象とし、建築種目の1級及び2級の一次検定のうち工学基礎に関する問題を免除
※国土交通省より
下記の国土交通省の資料を参照願います。
とのことです。
実務経験の証明書
実務経験の範囲
1級建築施工管理技士の実務経験と認められる工種は合計17業種です。
建築一式工事~解体工事まで多岐に渡っています。当然、電気通信工事などの実務経験は建築には経験としてはみなされないわけです。
要件の明確化と客観性の確保のため、実務経験に該当する工事の範囲を、それぞれの資格に対応した業種区分(建設業法29業種)に該当する種類の工事(建設業許可の必要な請負工事に該当しない場合を含む。)とする。
※ 複数資格が対応する業種については同じ経験を種目間で重複して計上可能。
※ 従事した業種が複数ある期間については、従事割合に応じて期間を按分することができる。
※ 建設業法26条の2に定める技術上の管理をつかさどるものを置いた場合、当該業種の経験とすることができる。
※ 建設機械種目については、当該建設機械による施工期間に限る。※国土交通省より
実務経験の証明方法
実務経験の証明方法は従来方式を見直すようです。
現所属先が全ての証明を行う方式を改め、工事ごとの証明を原則とする。(証明者ごとに証明書を作成)
ポイントはいくつかありますが、
- 原則として、主たる業務として従事した工事の従事期間等を、工事ごとに工事請負者の代表者等または当該工事の監理技術者等が証明する。
- 受検予定者が所属変更前または各工事終了後に証明書をあらかじめ取得することを基本とするため、事業者が倒産した等の理由により事後に証明を受けられない場合には、建設業者との雇用関係及び工事に従事したことの客観的資料による証明を必要とする。
このような証明方式になるようですが、これが複数社にわたる場合、その複数分を用意する必要があるということですね。
受検者によっては面倒になる方も出てきそうですね。
まとめ
今回インパクトのある改正の一つが、1級1次検定が19歳以上で実務経験なしで受検出来るようになったことですね。
つまり、実務経験がなくとも技士補の称号が得られるわけです。そしてそこから実務経験を得て2次検定の受検資格を得ましょうという話です。
これは受検者のすそ野を広げるという観点から言うと良いと思いますが、一方、技士補は名前だけの称号にもなるわけです。
引き続き、新たな情報を見ながらもう少し深堀りしていきたいですね。