【施工経験記述対策】施工の合理化が可能な工法(題材)を考えてみた(令和5年度版)

さて令和2年の施工経験記述対策として編集した当記事、令和5年度向けに更新しました。

昨今の施工経験記述の出題を考えると、出題テーマを1つに絞って対策するのは得策ではありません。

 

今回は、この『施工の合理化』の問題で、どんな合理化工法(材料見直しも含め)があるか、例を挙げて取り上げてみます。記述ネタに困っている人に少しでも参考になればと思います。

 

施工の合理化の問題で問われる内容

施工の合理化で、令和5年、令和2年と平成29年の問題を見てきましょう。

1,  工事概要であげた工事において,  あなたが実施した現場作業の軽減の事例を 3 つあげ,  次の①から③について具体的に記 述 しなさい。ただし, 3つの事例の②及び③はそれぞれ異なる内容を記述するものとする。
① 工種名
② 現場作業の軽減のために実施した内容と軽減が必要となった具体的な理由
③ ②を実施した際に低下が懸念された品質と品質を確保するための施工上の留意事項
【令和2年】
1,   工事概要であげた工事において,  あなたが実施した現場における労務工数の軽減,  工程の短縮 などの施工の合理化の事例を 2 つあげ,  次の①から④について記述しなさい。 ただし,2つの事例の②から④は,  それぞれ異なる内容を具体的に記述するものとする。
① 工種又は部位等
② 実施した内容と品質確保のための留意事項
③ 実施した内容が施工の合理化となる理由
④ ③の施工の合理化以外に得られた副次的効果
【平成29年】
1. 工事概要であげた工事において,あなたが計画した施工の合理化の事例を 2つあげ,それぞれの事例について,次の①から④を具体的に記述しなさい。
ただし,2つの事例の②から④の内容は,それぞれ異なる内容の記述とする。
① 工種又は部位等
施工の合理化が必要となった原因と実施した内容
③ 実施する際に確保しようとした品質と留意事項
④ 実施したことにより施工の合理化ができたと考えられる理由

ここ3回の出題内容は上記の通りです。

平成29年は、確保しようとした品質と留意事項、そして合理化ができた理由を記述する問題でしたが、

令和2年は副次的効果を問われる問題も出ています。

そして令和4年は実施した際に低下が懸念された品質と品質を確保するための施工上の留意事項が問われました。

平成29年の問題内容で準備した内容をそのまま書いても令和2年、令和4年の問題ではうまく対応できませんね。

国土交通省の言う、対策本の丸暗記NGというのは、この問題内容を少しアレンジすることで対応しているように思います。

※きっちり、問いの内容を理解して記述出来れば問題はないと思います。

施工の合理化とは?

施工の合理化』とは?

施工管理者は基本的には設計図書に基づき、

  • 工期を守りながら
  • 品質を確保しつつ
  • 法律も順守しながら
  • 安全管理も行い

設計図書通りに施工するのが本来の役割です。

しかし、それを何らかの理由・原因があって、工法の変更やそのほかの方法で、

・工期短縮を図る。
・省力化・省人化を図る。
・現場作業の軽減を図る。

など(それ以外にあるが、出題傾向として)を実施して、問題解決を行います。

  • 外部の工事だが、雨が続き工事が遅延した。
  • 大型台風で、現場に被害が起きた。
  • コロナの影響で1ヶ月工事が止まった。
  • 人手不足で熟練工の手配ができない。

などの工事進捗における様々な要因で、『施工の合理化』を行なう必要に迫られることは、多くの人が経験あると思います。

そして『施工の合理化』の手段の多くは、

  1. 工法変更により、工事を簡略化する。(何らかの作業が軽減される)
  2. 材料の変更(左官 ⇒ セルフレベリング等)
  3. 新しい技術の導入。
  4. 工場完成品を採用する。
  5. プレカットを行った上で搬入する。
といった感じで多くの場合、
・現場での作業を減らす
・熟練工が不要な工法の選定工期短縮を図ったり、省人化・省力化を行います。

またポイントとしては、ある一定の品質が確保出来ないと発注者や工事監理者の承認は得られないことでしょう。

では具体的に、施工の合理化の工法・事例を考えてみます。自分が実際に経験した内容であれば参考にしてもらえればと思います。

 

施工の合理化の工法の例

とりあえずさっと24程度作ってみました。気が向いたら追加します(笑)

(1)全面足場
(内容)移動式足場で外壁パネルを施工
(合理化)足場架設・撤去などの省力化
(2)山留め工事
(内容)切梁工法→地盤アンカー工法
(合理化)地下工事の際に切梁など作業の支障になるものがなくなり作業性が向上し、工期短縮にもつながる
(3)鉄筋工事
(内容)圧接継手→機械式継手
(合理化)鉄筋加工の省力化・熟練工の省人化など
雨天などの環境でも施工が可能(工期短縮にもつながる)
(4)型枠工事
(内容)合板型枠 ⇒ラス型枠
(合理化)型枠の解体が不要となり手間の削減(工期短縮・省力化)
軽量で運搬も用意(人員の省力化等)
(5)床型枠
(内容)型枠→フラットデッキ型枠
(合理化)支保工の設置解体などの手間の削減(工期短縮・省力化)
型枠の解体手間の削減等
(6)鉄筋工事、コンクリート工事
(内容)鉄筋コンクリートの柱・梁をPCa(プレキャスト)とする。
(合理化)現場ではPCaの組み立てのみで工期短縮・現場作業の省力化・熟練工不足の対応につながる
(7)鉄骨工事
(内容)鉄骨工事を地組で行い、その後建て方をする。
(合理化)細物鉄骨などを地上で取り付け可能になることにより荷上げ作業も削減され工期短縮と安全性の向上につながる。
(8)コンクリート工事
(内容)普通コンクリートを早強コンクリート
(合理化)短期間での強度発現に伴い工期短縮につながる
(9)ハト小屋(躯体工事)
(内容)ハト小屋のユニット化
(合理化)鉄筋・コンクリート工事などの大幅な労務削減(省力化)と工期短縮
(10)バルコニー
(内容)バルコニーのプレキャスト化
(合理化)現場での型枠・鉄筋・コンクリートの労務削減(省力化)と工期短縮
(11)外壁タイル工事
(内容)タイル後張り工事をタイル先付プレキャストコンクリート工法に変更
(合理化)現場でのタイル張りがないので、タイル張り工事の省力化・工期短縮
(12)ALC外壁パネル工事
(内容)工場で塗装まで行ったALCパネルを無足場工法で施工
(合理化)足場架設解体の費用及び現場での塗装手間削減(省力化・工期短縮)
(13)アスファルト防水工事
(内容)アスファルト防水を改質アスファルト防水・トーチ工法
(合理化)1-2層で防水層を形成するので工期短縮につながる。(改修の場合は発生材の抑制も)
(14)軽量鉄骨下地(金属工事)・プラスターボード(内装工事)
(内容)工場でのプレカットした上で搬入施工
(合理化)現場加工手間削減による省力化・工期短縮や発生材の抑制など
(15)造作カウンター(木工事)
(内容)現場合わせの木造作カウンターを工場完成品の木カウンターに変更
(合理化)現場加工手間削減による省力化・仕上げ工事の削減による省力化・工期短縮など
(16)鋼製建具(塗装)
(内容)内部の鋼製建具の現場塗装を工場塗装に変更
(合理化)現場塗装の削減による省力化と工期短縮
現場塗装による養生手間等の削減
(17)建具工事(交換)
(内容)建具交換の際、枠を撤去せずカバー工法とする。
(合理化)建具枠をそのままにするので、撤去の際の壁補修もなく、工期短縮と省力化につながる
(18)軽量鉄骨+PB貼り+塗装仕上げ
(内容)PB+塗装の壁間仕切りを金属パーティションに変更(スチールパーティション)
(合理化)現場加工手間・塗装手間削減による省力化・工期短縮など
(19)壁プラスターボード張り+クロス仕上げ
(内容)化粧石膏ボードに変更
(合理化)パテ及びクロス仕上げがなくなり、省力化・工期短縮につながる。
(20)床の左官工事(床下地モルタル)
(内容)セルフレベリング材に変更
(合理化)乾燥期間の短縮による工期短縮と、熟練工が不要による省人化
【令和4年追加】
(21)金属工事
(内容)外部階段を鉄筋コンクリート階段から鉄骨階段に変更
(合理化)工場製作の鉄骨階段の採用により現場での型枠やコンクリート工事等の手間の削減、工期短縮
(22)内装工事
(内容)台所のタイル張り仕上げをキッチンパネル仕上げに変更
(合理化)左官工事等の手間の削減(熟練工不要の省力化)
(23) 鉄筋工事
(内容)鉄筋工事は現場敷地内の地上で梁や柱のユニットを先行組立を行う。
(合理化)先組工法は高所での鉄筋工事の省力化や工期短縮につながる。
(24) 断熱工事・型枠工事
(内容)発泡ウレタン断熱を型枠兼用断熱ボード
(合理化)型枠と断熱を一つの工程で進め、合板型枠解体が不要になり省力化になる。
【令和5年追加】
(25)外壁タイル張替え工事
(内容)調査の上、エポキシ樹脂ピンニング工法に変更
(合理化)タイルの斫り、下地補修の省力化につながる。
(26)ウレタン塗膜防水
(内容)屋上までの揚重をやめてウレタン圧送工法に変更
(合理化)材料の荷上げ、荷卸しの省力化、材料の攪拌不要など。
(27)耐火被覆工事
(内容)吹付工法から耐火被覆材の巻き付け工法に変更
(合理化)養生も不要になり、固定ピンでワンタッチで固定でき工期短縮となる。
今後も少しずつ追加していきます。
施工の合理化は、上記のような工事を実施することにより、
工期短縮・省力化・省人化、現場作業の軽減などにつながり、
また品質の確保やそれ以外の副次的効果も問われます。
  • 品質の安定化(向上)につながった。
  • コスト削減となった。
  • 安全性向上につながった。
  • 発生廃材の抑制につながった。
  • 社員のリサイクル意識の向上にもなった。
というような+αの要素をきっちり準備しておきましょう。
また令和4年の問題のように、実施する事による品質懸念事項もきっちり押さえておく必要がありますね。
また実際に施工の合理化のために導入している、新技術の導入(ロボット化やIT化)など取り組んでいる事例を持っていたら、そんなのを記述するのも良いですね。

まとめ

現代の施工管理者の悩みの多くは、工程管理に関するものが多いと思います。

そんな中で、みなさんが実際に経験して取り組んだ『施工の合理化』というのは必ずあると思います。

それが、

何の目的(要因)で施工の合理化を実施したか?
・その実施した内容は品質も確保出来ていることを監理者や発注者が納得しているか?
・結果的にそれは施工の合理化に繋がったか?(工期短縮・省力化など)
どんな副次的効果があったのか?
・施工の合理化によって、何らかのデメリットはあるか?
という点についてきっちり整理しておきましょう。
施工の合理化の記述は、そのまま建設副産物の記述にも使えるものも結構ありますね。
工期短縮・省力化 ⇔ 廃棄物の発生抑制
この相関関係があれば、両方に使えます。
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