さて第二次検定対策の最も重要な問題、『施工経験記述』の記述ポイントシリーズも3回目、今回は『工程管理』の対策です。
前回は、施工計画を取り上げています。
この『工程管理』は2020年度に実地試験に出題されました。
施工経験記述において、文章記述及び表現が苦手だという人はいろんな出題内容に触れて記述練習を行い、可能ならば第三者に文章を見てもらう取り組みが良いと思います。
工程管理の出題
出題年次
さて、2級の施工経験記述『工程管理』の問題は、
- 令和2年(2020年)
- 平成29年(2017年)
- 平成26年(2014年)
ここ10年で3度出題されています。
この10年に限っては、
- 工程管理(2020年,2017年,2014年)
- 施工計画(2021年,2019年,2016年,2013年)
- 品質管理(2022年,2018年,2015年)
令和2年まではきっちり出題ローテーションが守られていたのですが、昨年は『品質管理』の出題予想とは裏腹に『施工計画』が出題されました。
私個人としても、2級に限ってそんなことはしないだろうと高を括っていたのですが、、、以降はその姿勢を改めます(笑)
という事で皆さんバランスよく学んでいきましょう。
工程管理とは?
工程管理とは?
これは日常においても多くの方が施工管理者として日々頭を使っていることだと思います。
基本的に新築工事、改修工事など大半の工事で工期が決まっているものがほとんどです。比較的余裕のある工期もあるとは思いますが、予定通りに工事が進まない事も多いかと。
工期を遅延させないため、厳守するために、
- 工期が遅延しそうな要因を押さえる。
- そのために何を行うか?(対策)
というのがこの技術検定における『工程管理』です。
工期を守るために、どういう方法を使って、何を実施したか?というのを自分の経験から落とし込む必要があります。
出題内容
令和2年(2020年)
まずは一昨年に出題された問題です。
なお,建築工事とは,建築基準法に定める建築物に係る工事とし,建築設備工事を除くものとする。(工事概要の詳細は略)
なお,選んだ項目 A は〇で囲み,3つの事例は同じ項目を選んでもよいものとする。
また,項目 B の ①工種名は同じでもよいが,②着目したこととその理由と ③行った対策は異なる内容の記述とし,品質管理のみ,安全管理のみ,コストのみについて記述したものは不可とする。
a. 材料 (本工事材料,仮設材料)
b. 工事用機械・器具・設備
c. 作業員 (交通誘導警備員は除く)
- 項目・・・材料(本工事材料,仮設材料)
- 工種名・・・左官工事
- 着目したこととその理由・・・工事が年度末の繁忙期と重複し左官の熟練工の確保が難しいため
- 行った対策・・・セルフレベリング工法に変更して施工した。
右側は端折った事例なので、参考までに。
この①〜④の内容を3つの事例を取り上げて記述する必要があります。
平成29年(2017年)
ただし,留意した内容が同一のものは不可とする。 また,工程管理以外の品質管理,安全管理,コストのみについて記述したものは不可とする。 なお,工種名については,同一の工種名でなくてもよい。
② 工事用機械・器具・設備
③ 作業員 (交通誘導警備員は除く)
この問題の記述すべき内容は下記の通り。
- 項目・・・材料(本工事材料,仮設材料)
- 工種名・・・軽量鉄骨工事(壁)
- 留意した内容・・・軽量鉄骨はプレカットで搬入、寸法毎に番号をつけて搬入するよう留意した。
- 着目した理由・・・現場が狭小で、現場での切断加工をなくす事で工期短縮となるため。
平成26年(2014年)
ただし,実施した内容の記述が同一のもの及び工程管理以外の品質管理,安全管理,コストのみについての記述は不可とする。 なお,工種名については同一の工種名でなくてもよい。
この問題の記述すべき内容は下記の通り。
- 工種名・・・左官工事
- 遅延要因とその理由・・・工事が繁忙期と重複し左官の熟練工の確保が難しいため
- 行った対策・・・セルフレベリング工法に変更して施工した。
この問題は問いの内容は厳密には異なりますが、ほぼ令和2年と同じと言って良いでしょう。
- (2020年)工事を遅延させないように着目したこととその理由
- (2014年)工期を遅延させる要因とその理由
ということで、2020年と2014年の記述内容はほぼ同じとなっても問題ないでしょう。
記述のポイント
『工事を遅延させないために』というのがこの出題のポイントですが、では工事を遅延させる要因について考えて見ましょう。
- 天候要因(天候不順や台風など)
- 熟練工や職人の手配が難しい
- 製作工場が納期を要する場合
- 現場諸条件による様々な制約
- コロナのようなイレギュラーな要因
このあたりの『工事を遅延させる要因』は1級の『施工の合理化』でも同様、施工者を悩ます要件でもあります。
ただ、色んな要因があっても発注者などが竣工が遅れることを容認出来れば良いのですが、なかなかそうはならないのが現実です。
そこで上記のような要因があっても、工期を遅延させないため(厳守するために)、それをどのように対応したのかを記述する必要があります。
それを下記観点を加えて記述します。
- 材料 (本工事材料,仮設材量)
- 工事用機械・器具・設備
- 作業員 (交通誘導警備員は除く)
この3つの要素から、工期の遅延を防ぐ方法を考える必要があります。
例えば、
・搬入は揚重そのほか、機械を導入して省力化の検討。(機械・器具)
・ある工種で集中的に作業員を導入する。(作業員)
工程管理の記述例
では2020年(令和2年)と2017年(平成29年)の問題別に記述例をそれぞれ3つほど。
令和2年(2020年)
①材料 (本工事材料,仮設材料)
②外壁ALCパネル工事
③外壁ALCパネル工事の複層塗材仕上げは、雨の多い6月末〜7月初旬の工程で、塗装〜乾燥期間を含めて工期遅延の恐れがあったため。
④現場での塗装仕上げをやめてALCパネル工場の場所を利用して、温湿度の安定した中での複層塗材仕上げを実施して、現場では設置のみとすることで、天候に左右されず工期を厳守した。
①工事用機械・器具・設備
②鉄筋工事
③コロナ禍により工事が一時的にストップし全体的に工程促進が必要な中、鉄筋工事がこの梅雨の時期で、雨天にも影響せずに工事を進める必要があったため。
④梁及び柱筋は工場での先組工法を採用し、現場に搬入の上レッカーで吊り上げた。現場では継手は機械式で対応することにより、雨天でも工事が可能となり工期遅延を防げた。
①作業員
②木工事
③各教室の木製オープン棚は全て部材からの現場加工組立だが、設置時期が3月下旬の工程となっており、1年での工事の最も繁忙期であり、熟練工の確保が難しいと判断したため。
④各教室毎に採寸を実施した上で全て工場製作にて発注し、完成品の状態で搬入を行い、現場では組立及び連結のみとしたので熟練工が不要となり、工事の遅延を防いだ。
平成29年(2017年)
①材料 (本工事材料,仮設材料)
②金属工事(軽量鉄骨壁下地工事)
③各フロアの壁間仕切りの軽量鉄骨下地材は、H2700でプレカットで搬入し現場での切断加工を省いた。高さが3種類あったので、フロア名と番号を割り振って搬入も間違えないよう留意した。
④現場での切断加工が省力化することにより、現場では組み立てのみとなり、また発生材が大幅に削減されることにより工期短縮につながるため。
①工事用機械・器具・設備
②ALCパネル工事
③外壁のALCパネル取り付けに際しては、足場を架設せずに無足場で室内側から取り付けを行った。事前に墨出しを実施することにより設置精度に留意した。
④外壁ALCパネル工事の後、外構工事を予定していたが、足場の設置及び解体がなくなる事により早期着手が可能になり、全体の工程短縮につながるため。
①作業員
②金属工事
③各室の間仕切りはLGS下地にPB塗装仕上げの計画だったが、工事監理者の承認を得て金属スチールパーティションに変更して施工した。完成品なので搬入時に傷がつかないよう梱包養生に留意した。
④LGS+PB塗装仕上げは、軽量鉄骨材取り付け、PB張り、そしてパテ〜の塗装と多くの職人の手配を必要とするが、金属パーティションだと取り付け作業員のみで済み、大幅な省人化に加え工期短縮にもつながるため。
まとめ
さて、今回3つの出題テーマについてまとめてみましたが、一番記述しにくかったのがこの『工程管理』です。
選択項目として、『材料』は無問題ですが、『工事用機械』、『作業員』は少し書きにくかったです。
昨年の出題は、『品質管理』だったので、この令和5年は特にこの『工程管理』とこの『施工計画』に重点を置いて取り組んでいきましょう。
参考までに、施工経験記述の『工程管理』の問題1-2の過去の出題の記事はこちらにまとめています。
2級建築施工管理技士の第二次検定の出題傾向については、下記の記事にまとめています。