【過去問】令和2年 1級建築施工管理技士 実地試験(問題と解答例)問題1〜3

過去問シリーズの2020年度版です。

コロナ禍でのスケジュールの遅れから実施されたのは2021年2月(4か月遅れ)でした。

ということで今回は、令和2年(2020年)1級建築施工管理技術検定試験 実地試験問題と解答例(問題1〜問題3)です。

問題1 施工経験記述(施工の合理化)
問題2 仮設計画・安全管理
問題3 躯体工事

以上の出題内容と解答・記述例です。

問題1 施工経験記述

問題1, 建築工事の施工者は, 設計図書に基づき,  施工技術力,  マネジメント力等を駆使して,  要求された品質を実現させるとともに,  設定された工期内に工事を完成させることが求められる。 あなたが経験した建築工事のうち,  品質を確保したうえで,  施工の合理化を行った工事を 1 つ 選び,  工事概要を具体的に記述したうえで,  次の 1.及び 2.の問いに答えなさい。 なお,  建築工事とは,  建築基準法に定める建築物に係る工事とし,  建築設備工事を除くものとする。

〔工事概要〕
イ. 工事名
ロ. 工事場所
ハ. 工事の内容 (新築等の場合:建築用途,構造,階数,延べ面積又は施工数量,主な外部仕上げ,主要室の内部仕上げ
改修等の場合:建築用途,建築規模,主な改修内容及び施工数量)
ニ. 工期 (年号又は西暦で年月まで記入)
ホ. あなたの立場

1,   工事概要であげた工事において,  あなたが実施した現場における労務工数の軽減,  工程の短縮 などの施工の合理化の事例を 2 つあげ,  次の①から④について記述しなさい。 ただし,2つの事例の②から④は,  それぞれ異なる内容を具体的に記述するものとする。

① 工種又は部位等
② 実施した内容と品質確保のための留意事項
③ 実施した内容が施工の合理化となる理由
④ ③の施工の合理化以外に得られた副次的効果

記述例-1
①左官工事
②床の左官工事はモルタルの金ゴテ仕上げから熟練工を必要としないセルフレベリング材で施工を行い、施工の際は、強い風や直射日光が入らないよう、また適切な養生期間を確保するよう留意して、床の平坦性を確保した。
③手配の難しかった熟練工を必要とせず、施工もレベリング材は自然と平滑となり、金ゴテ仕上げも不要で左官工事より1日あたりの施工量も多く、工期短縮と職人の省人化につながるため。
④セルフレベリング材の使用は工期短縮だけでなく、流し込むだけで均一なレベルを形成する性質を持っているので、職人の熟練度に平滑さにばらつきを生じることもなく、平滑な床の仕上がりにもつながった。
記述例-2
①鋼製建具工事
②共用部各所にある鋼製建具は枠及び建具の更新から、工事監理者の承認を得て、カバー工法にて施工を行った。各所毎に既存建具の寸法の実測を正確に行い、歪みやレベル差に留意した。
③建具のカバー工法は既存枠に新たな建具枠を内側に取り付けることにより、既存枠の解体及び壁周りの補修作業が亡くなることにより作業の省力化及び工期短縮にもつながるため。
④カバー工法の採用により、建具枠の解体及び建具枠周りの壁及び床のハツリによる発生材が大幅に抑制され、また費用の削減にもつながった。
2,    工事概要にあげた工事にかかわらず,  あなたの今日までの工事経験に照らして,  施工の合理化の取組みのうち,  品質を確保しながらコスト削減を行った事例を 2 つあげ,①工種又は部位等,   ②施工の合理化の内容とコスト削減できた理由について具体的に記述しなさい。
なお,  コスト削減には,  コスト増加の防止を含む。ただし2つの事例は,  1.  ②から④とは異なる内容のものとする。
記述例-1
①金属工事(壁軽量鉄骨下地)
②住居の各界壁の壁は天井の高さが全て同じだったので、軽量鉄骨下地は工場で全て天井高に合わせてプレカットしたものを現場に搬入した。プレカットにより現場での切断加工作業がなくなり、労務の人数を減らせるだけでなく、現場での端材が発生することなく発生材の抑制に繋がり、労務費と廃棄及び車両費用の削減によりコストの削減につながるため。
記述例-2
①外壁ALCパネル工事
②外壁ALCパネルを工場塗装で仕上げ、現場では無足場工法にて設置することにより、現場での塗装作業などの省力化につながる。また足場仮設及び解体が不要になることで大幅なコスト削減につながるため。

問題2 仮設計画・安全管理

問題2.  次の 1,から 3,の設備又は機械を安全に使用するための留意事項を,  それぞれ 2 つ具体的に記述しなさい。ただし,  解答はそれぞれ異なる内容の記述とし,  保護帽や要求性能墜落制止用器具などの保護具の使用,  気象条件,  資格,  免許及び届出に関する記述は除くものとする。また,使用資機材に不良品はないものとする。

1,    外部枠組足場

解答例
(1)壁つなぎ、または控えは垂直方向は9m以下、水平方向は8m以下に設け、枠組足場の高さは原則45mを超えないようにする。
(2)枠組足場は墜落を防止するために、高さ85cm以上の手すり、高さ35cm以上50cm以下の中さんを設ける。

2, コンクリートポンプ車

解答例
(1)ブームを使用して圧送作業を行う場合は、コンクリートポンプ車のアウトリガーは、 つねに両側を最大幅に張り出して設置する。
(2)輸送管を継手金具を用いて確実に接続すること、また輸送管を堅固な建設物に固定させ、輸送管及びホースの脱落及び振れを防止する措置を講じる。

3,    建設用リフト

解答例
(1)建設用リフトの運転者は、搬入機器を上げたままで、運転位置を離れてはいけない。
(2)建設用リフトにその積載荷重を超える荷重をかけて使用してはならない、また機器に労働者を乗せてもいけない。

問題3 躯体工事

次の 1,  から 8,  の各記述において,  記述ごとの箇所番号1から3の下線部の語句又は数値のうち最も不適当な箇所番号を 1 つあげ,  適当な語句又は数値を記入しなさい。
1.  つり足場における作業床の最大積載荷重は, 現場の作業条件等により定めて,  これを超えて使用してはならない。つり足場のつり材は,   ゴンドラのつり足場を除き,   定めた作業床の最大積載荷重に対して,   使用材料の種類による安全係数を考慮する必要がある。
 安全係数は,  つりワイヤロープ及びつり鋼線は 7.5 (①)以上,   つり鎖及びつりフックは 5.0(②) 以上,  つり鋼帯及びつり足場の上下支点部は鋼材の場合 2.5(③)以上とする。
解答・解説
(解答)① 10
(解説)作業床の最大積載荷重は、つり足場(ゴンドラのつり足場を除く。)にあっては、つりワイヤロープ及びつり鋼線の安全係数が10以上、つり鎖及びつりフックの安全係数が5以上並びにつり鋼帯並びにつり足場の下部及び上部の支点の安全係数が鋼材にあつては2.5以上、 木材にあっては5以上となるように、定めなければならない。
労働安全衛生規則第562条に定められています。
2.  地下水処理における排水工法は,  地下水の揚水によって水位を必要な位置まで低下させる工法であり,  地下水位の低下量は揚水量や地盤の透水性(①)によって決まる。
 必要揚水量が非常に多い(②)場合,  対象とする帯水層が深い場合や帯水層が砂礫層である場合には,  ウェルポイント(③)工法が採用される。
解答・解説
(解答)③ ディープウェル工法
(解説)ウェルポイント工法は比較的浅い掘削に用いられ、ディープウェル工法は主に砂層などの透水性のよい地盤の水位低下に用いられ掘削の深度が深い場合に有効となります。よって③はディープウェル工法となります。(平成24年度と類似問題です)
3.    既製コンクリート杭の埋込み工法において,  杭心ずれを低減するためには,  掘削ロッドの振れ止め装置を用いることや,  杭心位置から直角二方向に逃げ心を取り,  掘削中や杭の建込み時にも 逃げ心からの距離を随時確認することが大切である。
 一般的な施工精度の管理値は,   杭心ずれ量が4/D(①) 以下(Dは杭直径)かつ,  150mm(②)以下,  傾斜1/100(③)以内である。
解答・解説
(解答)② 100
(解説)傾斜を1/100以内,杭心ずれ量を杭径の1/4,100mm以内とする、とJASS4で定められています。

4.   鉄筋工事において,   鉄筋相互のあきは粗骨材の最大寸法の 1.25 倍,  20(①)mm 及び隣り合う鉄筋の径(呼び名の数値)の平均値の1.5 倍(②)のうち最大のもの以上とする。
鉄筋の間隔は鉄筋相互のあきに鉄筋の最大外径を加えたものとする。
 柱及び梁の主筋のかぶり厚さはD29 以上の異形鉄筋を使用する場合は径(呼び名の数値)の1.5倍(③)以上とする。

解答・解説
(解答)① 25
(解説)粗骨材の最大寸法の1.25倍,   25mm,   隣り合う鉄筋の径の平均の 1.5倍
※これは学科試験でも頻出されている数値ですね。絶対に外せない問題です。

5.   型枠工事における型枠支保工で,   鋼管枠を支柱として用いるものにあっては,   鋼管枠と鋼管枠との間に交差筋かい(①)を設け,  支柱の脚部の滑動を防止するための措置として,   支柱の脚部の固定及び枠(②)の取付けなどを行う。
また,  パイプサポートを支柱として用いるものにあっては,   支柱の高さが3.5 mを超えるときは,  高さ2 m以内ごとに水平つなぎ(③)を&方向に設けなければならない。

解答・解説
(解答)② 根がらみ
(解説)支柱の脚部の固定、根がらみの取付け等支柱の脚部の滑動を防止するための措置を講ずること。
※労働安全衛生規則第242条より
6.   型枠の高さが4.5m(①)以上の柱にコンクリートを打ち込む場合,   たて形シュートや打込み用ホースを接続してコンクリートの分離を防止する。
たて形シュートを用いる場合,  その投入口と排出口との水平方向の距離は,  垂直方向の高さの約1/2(②)以下とする。
また,   斜めシュートはコンクリートが分離しやすいが,   やむを得ず斜めシュートを使用する場合で,   シュートの排出口に漏斗管を設けない場合は,   その傾斜角度を水平に対して 15 (③)度以上とする。
解答・解説
(解答)③ 30
(解説)建築工事標準仕様書で、シュートに関する記述は下記の通りになっています。
シュートは原則としてたて型シュートとする.やむを得ず斜めシュートを用いる場合 は,水平に対する傾斜角度を 30 度以上とする.
平成28年度と同じ問題です。
7.    溶融亜鉛めっき高力ボルト接合に用いる溶融亜鉛めっき高力ボルトは,   建築基準法に基づき認定を受けたもので,   セットの種類は1種,   ボルトの機械的性質による等級はF8T(①)が用いられる。
 溶融亜鉛めっきを施した鋼材の摩擦面の処理は,   すべり係数が 0.4 以上確保できるブラスト処理又はりん酸塩(②)処理とし,   H形鋼ウェブ接合部のウェブに処理を施す範囲は,   添え板が接する部分の添え板の外周から 5 mm 程度外側(③)とする。
解答・解説
(解答)③ 内側
(解説)公共建築工事標準仕様書より引用

この画像参照して欲しいのですが、ブラスト処理がなされているのは、添え板範囲から5mm内側になっていますね。
この問題がわからない場合は、他の選択肢から用語が思いつかない場合、単純にこの③を選択して、外側⏩内側と記述するのも一つの戦術ですね。
8.   鉄骨の現場溶接作業において,   防風対策は特に配慮しなければならない事項である。
 アーク熱によって溶かされた溶融金属は大気中の酸素や窒素(①)が混入しやすく,   凝固するまで適切な方法で外気から遮断する必要があり,  このとき遮断材料として作用するものが,  ガスシードアーク溶接の場合はシールドガス(②)である。
 しかし,  風の影響によりシールドガスに乱れが生じると,   溶融金属の保護が不完全になり溶融金属内部にアンダーカット(③)が生じてしまう。
解答・解説
(解答)③ ブローホール
(解説)アンダーカットが生じる理由は、溶接電流が高すぎるか、溶接速度が早いために起きる場合が多い。ガスシールドアーク溶接において、風がシールドを劣化させブローホールが発生する原因になる。
※平成26年にほぼ同様の問題が出題されています。

 

前半戦終了

次回は、令和2年(2020年)1級建築施工管理技術検定試験 実地試験問題と解答例(問題4〜問題6)に続きます。

前半戦の総括としては、

・施工経験記述は予定通り『施工の合理化』が出題された。
・問題2の安全管理は初出のものもあったが、過去問でやってきた知識である程度は解答できた人もいるかと思います。
・問題3の躯体工事は学科試験の知識と過去問対応で5問程度は正解しておきたい内容です。

個人的な感想としては、問題はオーソドックスだったと思います。

ただし、施工経験記述の施工の合理化について、記述内容をある程度暗記頼りにしていると、出題のされ方が変わっていたのでうまく記述出来なかった人もいると思います。

 

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