今回取り上げる記事は第一次検定向け『ネットワーク工程』についてです。第二次検定に取り組む段階での基礎知識の習得にも参考になるよう、基本用語についても説明しています。
独学でやっていると、どうしても嫌いというか苦手な分野が出てきます。
私が学科試験の独学の際の構造力学(曲げモーメント図等)がそうでした。個別に勉強しても良かったのですが、建築学の分野で15問中12問解答すれば良いから構造力学関連の問題を選ばなくても良いし、第二次検定(当時の実地試験)でも出題されないからやらないと割り切りました。
それ以外で、施工管理法の問題で少し理解の難しいのがネットワーク工程です。
第一次検定では、各年度1問しか出題されない(令和4年は出題なし)のでそこまで重要視する必要がありません。(捨ててもある意味問題はない)
ただし、第二次検定ではここ6年ほどネットワーク工程の問題が出題されています。(年々問題が難しくなっている)
今回は第一次検定対策としてメインの用語の解説を行いますが、特にクリティカルパスの概念とフリーフロートを理解しておくと、第二次検定の過去問がスムーズに解けるかもしれません。→というか基本的なネットワーク工程の概念を理解しておかないと、2次検定の問題はうまく解けないと思います。
第二次検定対策に入ってから準備をしてもなんら問題ありませんが、理解できる分野が少しでも多くなると、資格取得への自信につながり勉強継続のモチベーションにもなります。
というか資格対策でわからない分野が多いと挫折しやすいと言った方が良いかも知れませんね。
・よくでるネットワーク工程の用語の解説
・過去問の例
・第二次検定に必要な知識
上記にクローズアップして取り上げたいと思います。
この記事はあまり専門用語で難しく書かずに、極力わかりやすさにフォーカスしたいと思っており、あくまでも1級建築施工管理技士の検定対策の内容となっています。
ネットワーク工程とは?
平成28年 学科試験のネットワーク工程の問題です。
下記の4つの選択肢から、誤っているものを見つけてみましょう。
- 作業⑥→⑨の最遅終了日は25日である。
- 作業⑦→⑧の最早開始日は18日である。
- 作業⑤→⑦のフリーフロートは2日である。
- 作業⑥→⑨のトータルフロートは1日である。
- 解答
- 答えは③です。フリーフロートは1日です。
次の項で説明しています。
技術検定で出題されるネットワーク工程は、この表の通り○印と矢印を利用して、いくつかの前後する作業の関連性を整理し、関係性を明確化するために作成します。
例えば、内装工事で天井塗装、壁クロス、巾木、カーペット工事やそれに加えて電源工事などが各フロアで作業がある時、その各工事の交通整理を行うために視覚化された工程表と言ってよいでしょう。
・逆にカーペット工事が○○日からスタートするが、壁クロスはいつからいつまでに仕上げればよいか。
・どこに余裕日数があるか。
⑧の工事は、④と⑦の工事が終わってからスタートする。
⑦の工事は、⑤と⑥の工事が終わってからスタートする。そんな関連性から全体工程を把握するために利用します。
ネットワーク工程における用語
では実際に第一次検定に出てくる用語について整理します。
・クリティカルパス
工程の最長経路の事。ネットワーク工程の各つながった工程を結んだ時の一番長い経路のこと。
先程のネットワーク工程で例をあげると、一番長い経路をチェックすると32日間を必要としています。例えば④→⑧の工期を短くできても、このクリティカルパスが短くならないと、全体工程の短縮は出来ない事がわかります。
今回の工程の総所要日数にもなっています。
※クリティカルパスは必ずしも1本とは限りません。
※工程短縮するにはこのクリティカルパスの短縮が必要ですね ←これ重要です。
・最早開始時刻(EST)
各工事・作業が最も早くスタート出来る時刻(日程)。この青文字が最早開始時刻です。単純に足し算ですが、⑦は17日目ではなく⑥が終了しないと開始できないので18日です。それ以外は計算通りですね。
・最早終了時刻 (EFT)
工事・作業が最も早く完了する時刻(日時)
最早終了時刻はピンクの文字がそうです。全体のクリティカルパスより早く終了するものだけを記載しています。例えば④の作業の最早終了時刻は18日ですね。その次の⑧の作業が21日ですから、3日の余裕がありますね。

・最遅終了時刻 (LFT)
工期を遵守するために各工事が完了しなければならない時刻(日時)。最遅終了時刻は、まずクリティカルパスの工程から日数を記入します。(黄色の丸印のラインに沿って)
クリティカルパスは最長工程であり、その日程が遅れると工程の遅延となります。
そしてこの最遅終了時刻が遅れると工期が遅延します。つまり最遅終了時刻は工程を進める上でギリギリの工程ラインです。
・最遅開始時刻(LST)
工期を遵守するために工事を最も遅くとも着手すべき時刻(日時)。例えば、⑨は最遅終了時刻の25日からスタートしなければ間に合いません。
④の最遅終了時刻は14日ですが、後続作業が15日からスタートしても工期に間に合います。いずれにしても一般的な工事では最遅の開始時刻・終了時刻で工事は進めたくないですね。
ある作業を最早開始時刻でスタートして、その次の後続する作業が最早開始時刻で始めたとしても余る余裕日数。
(後続作業に影響しない)←これ重要!
後続作業の最早開始時刻(EST)ー当該作業の最早終了時刻(EFT)がフリーフロート(余裕日数)となります。
⑤の工事 13+4=17 ESTは18なので フリーフロートは1日となります。
④⑥も同様の計算でフリーフローが計算できます。先程の平成28年の問題は⑤→⑦のフリーフロートは2日となっていますが、1日が正解ですね。
※第二次検定対策としてはこのフリーフロートを特に理解しておきたいですね。
・トータルフロート
ある作業を最早開始時刻でスタートして、後続作業を最遅開始時刻で始める場合でその作業がもつ余裕日数。
最遅終了時刻(LFT)ー最早終了時刻(EFT)がトータルフロートになります。
トータルフロートは一つの経路で共有されているので、③→⑤で使うと、⑤→⑦では使えなくなる。
つまり③→⑥→⑦で8日間、③→⑤→⑦で7日間なので、実質の余裕日数は1日であることを認識しておく必要があります。
後続作業に影響するトータルフロートのことで、トータルフロートからフリーフロートを引いて求めることで出来ます。あまり詰め込みすぎると大変なので、ディペンデントフロートは上記内容だけ理解しておけば問題ないでしょう。
他は過去問を繰り返し行いながら、慣れるようにしていきたいですね。
過去問の出題例(学科試験)
平成29年 ネットワーク工程の問題
【問題】次の条件の工事の総所要日数として,正しいものはどれか。
ただし,( ) 内は各作業の所要日数である。
イ. 作業 A ( 3日 ) 及び B ( 4日 ) は,同時に着工できる。
ロ. 作業 C ( 6日 ) は,作業 A 及び B が完了後,作業を開始できる。
ハ. 作業 D ( 5日 ) 及び E ( 8日 ) は,作業 B が完了後,作業を開始できる。
ニ. 作業 F ( 4日 ) は,作業 C 及び D が完了後,作業を開始できる。
ホ. 作業 E 及び F が完了したとき,全工事は完了する。
- 11日
- 12日
- 13日
- 14日
- 解答・解説
- (解答)④
(解説)自分なりに手書きでネットワーク工程を書いてみましょう。
問題内容の作業をネットワーク工程にするとこんな感じになります。
合計は14日間の工事となります。この工程の中でここにフリーフロートが何日あるとかわかるようになると完璧です。
平成29年 ネットワーク工程の問題
【問題】ネットワーク工程表に関する記述として、最も不適当なものはどれか?
- トータルフロートは,当該作業の最遅終了時刻 (LFT) から当該作業の最早終了時刻 (EFT) を差し引いて求められる。
- ディペンデントフロートは,後続作業のトータルフロートに影響を与えるフロートである。
- クリティカルパス以外の作業でも,フロートを使い切ってしまうとクリティカルパスになす。
- フリーフロートは,その作業の中で使い切ってしまうと後続作業のフリーフロートに影響を与える。
- 解答・解説
- (解答) ④
(解説)フリーフロートは後続作業に影響しない余裕日数のことを指す。後続作業は最早開始時刻からスタート可能です。
③フロート(余裕日数)を使い切ってしまうと、最長工程のクリティカルパスになりますね。
②先程の解説の通りです。
①トータルフロートも先程の解説の通りです。
※フロートでは後続作業の有無をよく理解しておくと良いでしょう。
第二次検定対策のネットワーク工程
第二次検定においては、平成29年から6年連続で出題されているネットワーク工程。
傾向として多く出題されるのは、
・所要日数(工事終了予定日を解答)
・フリーフロートの日数
です。
そして第二次検定に出題されるネットワーク工程の特徴は、
- 内装工事か躯体工事のどちらかの工程
- 2工区に分かれている。
- ある工事の班がA工区を終了すると、B工区に移動して工事をする。
- 総所要日数は祝日などを考慮して計算をする必要がある。
こんな感じです。
総所要日数を解答する場合、例えばA6作業とB6作業が同じ班で行うので(タクト方式)、日数計算をする場合はそこを考慮する必要があります。
クリティカルパスとフリーフロートを理解すれば、過去問題も既に6年分蓄積されているのでその問題が理解出来ると対応できると思います。
毎年合計6個回答する必要があり、おそらく12点だと思います。
全問正解ではなくとも、確実に押さえておきたい問題です。
こちらはバーチャート工程とネットワーク工程の傾向と対策記事です。
2023年(令和5年)10月に実施される1級建築施工監理技士・第二次検定の対策、今回は問題3の施工管理(工程)についてです。 ※令和2年までは問題5だったが、令和3年からは問題3となった。 第二次検定の対策と傾向は下記記事で[…]
まとめ
ふと思い立って書き始めたネットワーク工程の対策。改めて自分の勉強にもなりました。
最初に書いた通り、昨年までの学科試験で出題されるネットワークの問題は毎年1問です。
なので、これが合否に影響する可能性は低いでしょう。ただ、少なくともクリティカルパスの概念とフリーフロートを理解しておくと、第二次検定の取組みにつながります。
例年の受検者に聞くと、このネットワーク工程がうまく出来なかったという話を良く聞きます。しかし上記の内容を理解出来れば確実に得点出来るのでしっかり取り組んで欲しいですね。
本年度の第二次検定対策は、法人向けサービスとして資格取得支援サービスを行っています。