2023年度の1級建築施工管理技士の第二次検定対策の施工経験記述対策、今回は『施工の合理化』です。
『施工の合理化』は昨年の令和4年、そして令和2年と出題されています。過去の出題傾向から2年連続で出題されていないので、今年は比較的出題される可能性は低いと言って良いでしょう。(絶対ないとも言い切れない)
ただ、この『施工の合理化』は例年、問題内容がバリエーションに富んでおり(年次によって問われる内容が結構異なる)、記述の応用力をつけるには良い問題だと思っています。
なので、第二次検定までまだ十分時間があるし、施工経験記述対策としては3つの出題テーマをバランスよく学ぶことをお勧めしておきます。
・過去の出題
・出題内容(2022年)
・施工の合理化とは?
・記述例
過去の出題年度
過去10年の出題テーマは下記の表の通りです。
2022年(令和4年) | 施工の合理化 |
2021年(令和3年) | 品質管理 |
2020年(令和2年) | 施工の合理化 |
2019年(令和元年) | 品質管理 |
2018年(平成30年) | 建設副産物 |
2017年(平成29年) | 施工の合理化 |
2016年(平成28年) | 品質管理 |
2015年(平成27年) | 建設副産物 |
2014年(平成26年) | 品質管理 |
2013年(平成25年) | 施工の合理化 |
2012年(平成24年) | 建設副産物 |
令和3年、令和4年は『建設副産物』が出題されるのかな~、と思っていたら、2年連続でスキップされましたね。
昨今の出題傾向については下記の記事にまとめています。
さて、この『施工の合理化』については、『建設副産物』の記述とセットで使えると少し楽です。
・プレカット・プレキャスト化 →副産物の発生抑制につながる。(建設副産物)
出題内容1(令和4年)
なお、建築工事とは、建築基準法に定める建築物に係る工事とし、建築設備工事を除くものとする。
① 工種名等
② 現場作業の軽減のために実施した内容と軽減が必要となった具体的な理由
③ ②を実施した際に低下が懸念された品質と品質を確保するための施工上の留意事項
- 工種名等
- 実施した内容と軽減が必要となった具体的な理由
- 低下が懸念された品質と品質を確保するための施工上の留意事項
『低下が懸念された品質』については、うまく記述出来なかった方も多かったと思います。
出題内容2(令和2年)
① 工種又は部位等
② 実施した内容と品質確保のための留意事項
③ 実施した内容が施工の合理化となる理由
④ ③の施工の合理化以外に得られた副次的効果
- 工種名・・・誰でも書けますね。(自分の経験した工事)
- 実施した内容と留意事項(品質確保のため)
- 施工の合理化となる理由
- 副次的効果
この4つの内容を2つ記述する必要があります。
施工の合理化とは?
昨今の建設業は就労者の高齢化でいわゆる熟練工が不足している状態が続き、多くの工種で施工の合理化工法に取り組む必要(現場における作業の軽減化)があり、今後もいっそうの合理化・機械化・省人化が進むものと思われます。
この技術検定(第二次検定)の施工経験記述における『施工の合理化』に関する考え方は、
↓
・何らかの要因・事情があって、『施工の合理化』『現場作業の軽減』をする必要があった。
↓
・当然、設計者・発注者の要求する品質を確保する必要はある。(品質低下の懸念はあるか)
↓
・『施工の合理化』の目的達成(ついでに副次効果もあった)
- 天候要因で工程が大幅な遅延があり、ある程度の工期短縮の必要があった。
- 立地的、あるいは近隣条件などさまざまな工事制約があった。(指定された工法での対応が難しい)
- 熟練工不足で人員確保が難しい。
- ある材料がなかなか入手出来ない状況である。
- より安全性を確保できる工法にしたい。
工事を進めていると、さまざまな課題が発生するのはよくあることです。でも工期を後ろに倒せることもままならない場合が大半ですね。
東南アジアに旅に出ると、ホテルの開業予定日に建物がまだ全く完成していない状況を何度も見てきましたが、残念ながら日本はきっちり工期を守りますね(笑)
話を戻すと、上記のような様々な要因から、工期短縮・省力化・省人化を図るのが『施工の合理化』です。
具体的には、
- 工事監理者と協議の上、工法を変更して工期短縮を行う。
- 現場加工作業をやめて、工場完成品を搬入設置し、現場では搬入組立のみとする。
- 材料のプレカットを行い、現場での切断加工をやめて発生材抑制にもつなげ省力化を図る。
- 外壁タイル・バルコニーなどをプレキャスト化(工業製品化)を図り、熟練工不足に対応し工期短縮にもつなげる。
- 新技術の導入などで作業の機械化を行い、省人化を図る。
などが『施工の合理化』の例として考えられます。
設計図書が前提で施工を進めるのが施工管理者の大事な役割なので、必要に迫られたからと言って施工者の勝手な判断で『施工の合理化』を進めるわけにはいきません。
- あくまでも工事監理者や発注者の承認が必要です。
- 工事監理者や発注者に了解を得るためには、その施工の合理化工法がきっちり品質が確保出来ることが重要ですね。
- 従来の工法と比べ、美観・性能・耐久性などが担保出来て、なおかつ工期短縮が出来るならば問題なく承認を得られることでしょう。
- またその工法を行うことにより、例えば建設副産物の発生が抑制できた、と言った副次的効果があればいう事ないですね。
こう言った、流れの論理構成を構築しておくと、この『施工の合理化』は完璧です。
過去の出題との比較
過去3回分の問題内容を比較してみましょう。
2022年(令和4年) | 2020年(令和2年) | 2017年(平成29年) |
工種名等 | 工種又は部位等 | 工種又は部位等 |
実施した内容と軽減が必要となった具体的な理由 | 実施した内容と品質確保のための留意事項 | 施工の合理化が必要になった要因と実施した内容 |
低下が懸念された品質と品質を確保するための施工上の留意事項 | 実施した内容が施工の合理化となる理由 | 施工の合理化をするにあたって品質も確保し、 なおかつ留意すべき事項について |
③の施工の合理化以外に得られた副次的効果 | 施工の合理化につながったと思われる理由 |
解答すべき内容は、少しずつ異なっているのが『施工の合理化』の特徴です。
・2022年(令和4年)は施工の合理化理由は問われなかった。
・2022年(令和4年)は低下が懸念された品質を問われた。
参考までに、令和2年の副次的効果は、Weblioによると、
主な効果に付随して発生する効果、本来の目的として期待されたものではない二次的な影響などを意味する語。例えば禁酒などは健康増進・ダイエットなどを主な目的とすることが多いが、その副次的効果として酒代の節約などを挙げることもできる。
つまりは、目的は『施工の合理化』ですが、それに加えて別の効果があったということですね。
- 発生材が抑制できた。
- 車両(費用)などの削減にもつながった。
- 環境対策にもつながった。
- 美観も良くなり顧客にも喜ばれた。
- 作業の安全性の向上にもつながった。
などが考えられます。(まだまだありますが)
・品質もちゃんと確保した。
・その上+αの効果があった。
- 合理化が必要になった要因(合理化の目的)
- 実施した内容
- 品質確保のための留意事項
- 低下が懸念された品質(品質低下リスク)
- 品質確保できる理由
- 施工の合理化になる理由
- 副次的効果
以上を準備しておくと、ある程度応用が効くものと思われます。
施工の合理化の記述例
具体的に令和4年及び令和2年の問題に基づいた記述例を書いてみます。
2022年(令和4年) | 2020年(令和2年) |
①工種名等 | ①工種又は部位等 |
②実施した内容と軽減が必要となった具体的な理由 | ②実施した内容と品質確保のための留意事項 |
③低下が懸念された品質と品質を確保するための施工上の留意事項 | ③実施した内容が施工の合理化となる理由 |
④の施工の合理化以外に得られた副次的効果 |
2022年(令和4年) | 2020年(令和2年) |
① 鋼製建具工事 | |
② 工事が繁忙期と重なり塗装工の確保が難しかったので、住居共用部の各鋼製建具は現場塗装の計画を、工事監理者の承認を得て、工場での焼付塗装仕上げの完成品を納入して、現場での塗装作業の軽減を行った。 | ② 住居共用部の鋼製建具は現場でのOP(油性)塗装の計画だったが、工事監理者の承認を得て、工場焼付塗装仕上げの完成品の納入設置とした。塗装仕上げでの納入だったので、傷をつけないよう建具本体の梱包養生に留意した。 |
③ 工場にて塗装まで仕上げて現場で設置するため、搬入時や施工時に本体が傷がついたり損傷すると、塗装の剥がれが起きる恐れがあったので、設置後も傷がつかないよう建具本体をベニヤで養生を行った。 | ③ 現場でのOP塗装の場合、塗装する手間と塗装後の乾燥期間が必要となってくるが、工場で焼付塗装した建具は現場での仕上げ作業が全く不要となり、塗装工事の省力化と工期短縮につながるため。 |
④共用部全体の鋼製建具は30個以上あり、現場塗装の場合はかなりの養生材が必要だったのが不要となり、大幅な発生材の抑制にもつながった。 |
2022年(令和4年) | 2020年(令和2年) |
① 型枠工事(基礎) | |
② 基礎及び地中梁部の工事が梅雨時期で雨が降ると地盤が緩み工事が中止となり、工期遅延の恐れがあるため基礎型枠は当初の合板型枠より型枠の解体が不要となるラス型枠に変更して現場作業の軽減を行った。 | ② 基礎及び地中梁部の基礎型枠工事は当初の合板型枠より型枠の解体が不要となるラス型枠に変更した。ラス型枠は余剰水とともにセメントペーストが流出する懸念があったので、かぶり厚さを10~20mm大きく確保するよう留意した。 |
③ ラス型枠は余剰水とともにセメントペーストが流出する懸念があったので、かぶり厚さを10~20mm大きく確保するよう留意した | ③ ラス型枠は合板型枠と比べ軽量なため、運搬作業の省力化につながり、また捨て型枠で型枠の解体作業も不要となり工期短縮にもつながるため。 |
④ 木製型枠は組立及び解体の際に、比較的大きな音が出るが、ラス型枠は組立時もあまり音が出ず解体工事もないため、近隣の騒音対策にもつながった。 |
まとめ
施工の合理化工法というのは無限にあるわけではないので、受検者の記述も似たようなものが多くなりがちです。
理論構成をしっかり立てて上記の基本的事項を押さえておくことがとても大切です。
例年の問題内容を勘案すると『建設副産物』と文章構成が似ているのと、『施工の合理化』と『発生抑制』は親和性が高いので、きっちり演習をしておくと、『建設副産物』へのヒントにもなります。
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